キミに恋の残業を命ずる



来客用のソファに座って待っててもらうと、わたしは給湯室の冷蔵庫に入れていたおにぎりをレンジで温めて、お茶と一緒に出した。



「お待たせしました。おかかとしそ味噌どっちがいいですか」

「……」



ほんのりと湯気がたっているおにぎりを見つめたまま、課長は黙りこんでいた。


はっ!


しまった。おかかとしそ味噌なんて…どちらも渋好み過ぎるじゃないっ。


「ご、ごめんなさい!どっちも微妙ですよねっ。なんかおばあちゃんが作ったおにぎりみたいで…っ」

「いや…」


おにぎりを見つめて考えている課長を見て泣きそうになる。

こんなハーフのきれいな人に、しそ味噌とおかかなんて…。せめておばあちゃんが送ってくれた鮭にすればよかった…!
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