キミに恋の残業を命ずる
…墓穴を掘った…。
顔が火照るのを、湯呑に口をつけてごまかす。
けど…「間接キス」なんて言葉を聞いたせいで、思い出さないようにしていたことを思い出してしまった。
昨晩、唇に感じたほのかな感触…。
かぁあと熱くなって、ごくごくお茶を飲み干した。
わたしってば、なに考えてるんだろう。あれは誤解。妄想!キスなんて、されたわけがないのに…!
「ね」
「へ?」
「今度、キミの手料理食べてみたいな」
「え!?」
突然の言葉に、思わず叫んだ。
「俺、キミの料理気になっちゃった。おにぎりだけでこんなに美味いんだもん。ぜひ他のも食べてみたい。作り立てほやほやの」
「そんな!わたしの料理なんてお口に合いませんよ」
「食べてもいないのにそう言われてもなぁ。ね、一度でいいから。…困る?」
「…困ります…」
クスと笑ったその顔は、イジワルな表情を浮かべていた。
いかにも、わざと困らせてたのしんでいるような…。