キミに恋の残業を命ずる


どうしたんだろう?


訝しんでいると、廊下がざわついているのに気づいた。

ざわめきは総務部のすぐ近くにあるラウンジの方で起こっているみたいだった。

ラウンジは社員の食事場所や休憩場になっている場所だけれど、この時間はほとんど人がいないはず…。どうしたんだろう。



近づいてみると、社員がどんどん集まってきていた。

もしかして、社内中の社員が来てる…?という予想は、朝礼さながらの人数がラウンジに集まっているのを見て確信に変わった。

みんな、ちょっと興奮気味に人だかりの中心を見ている。
特に女性が熱心で、男性はなかば女性社員の興奮に圧されて遠巻きに見ている感じだ。



人だかりの中に顔見知りの他部署の先輩にがいたので訊いてみた。


「どうしたんですか?」

「どうしたもこうしたも。きっとここ数年で一番の事件よ!」


と、先輩はわたしに顔を向けることなく熱い視線を送り続ける。


「ほら、人だかりの中心見て見なさいよっ。ちょーイイ男がいるでしょ」


言われるがまま目をこらした。
そしてそのまま見張った。


だって女性たちに囲まれるようにいるのは、





遊佐課長だったから―――!
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