キミに恋の残業を命ずる
まさに社の危機を救った英雄とも賞賛される彼は、彼のためだけに設けられた「特別開発課」に所属し、今はアメリカに単身出張していることになっていた。
けれども。
その姿を見たことがある社員は、ひとりもいなかった。
なぜなら彼は、幹部のみで行われる重要会議にすら出たことがなく、本社とのやりとりも一部の社員とメールでしか行わないからだ。
当然、わたしたち平社員もその姿を見たことなどなく、詳しい情報すらも教えられていなかった。
ゆえに、社員たちは次第にその存在性を疑うようになって、彼のことを「幻の課長」と呼び、失敬にも七不思議にカテゴライズまでしていた。
そんなミステリアスな人物。
その名こそ…
「遊佐裕彰(ひろあき)…課長」
わたしは茫然としながら実在した「幻の課長」の名を繰り返した。
けれども。
その姿を見たことがある社員は、ひとりもいなかった。
なぜなら彼は、幹部のみで行われる重要会議にすら出たことがなく、本社とのやりとりも一部の社員とメールでしか行わないからだ。
当然、わたしたち平社員もその姿を見たことなどなく、詳しい情報すらも教えられていなかった。
ゆえに、社員たちは次第にその存在性を疑うようになって、彼のことを「幻の課長」と呼び、失敬にも七不思議にカテゴライズまでしていた。
そんなミステリアスな人物。
その名こそ…
「遊佐裕彰(ひろあき)…課長」
わたしは茫然としながら実在した「幻の課長」の名を繰り返した。