キミに恋の残業を命ずる
誰もいない、真っ暗なオフィス。
カタ…カタカタ…
聞こえるのは、わたしがキーをたたく音だけ。
それが余計にみじめさをあおる。
ああ、きっと今残業してるのって、わたしだけなんだろうなぁ…。
ぶるり
思わず肩を震わせて、パソコンのディスプレイから視線をはずした。
お気に入りのネコちゃんの卓上時計は、夜の八時をさしていた。
どおりで寒いはず…。
秋も終わりを感じる今日この頃。この時間になると冷えこみが厳しくなる。
でも、まだ確認しなければならないデータは、カラカラカラ…と、はるか下までスクロールできた。
「はぁ…」
もう疲れたため息しか出てこない。
真っ暗なオフィスでひとりぼっち。
しかも花の金曜になんてもの好き―――って思われるだろう。
でも、好きでこんなことなんかしていない。
不幸が身にかかったのは、さかのぼれば数時間前のことだった。
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