キミに恋の残業を命ずる
「みんな集まっているようなのでちょうどいい。報告がある。今まで特別開発課をひとりで担ってきたこちらの遊佐裕彰課長が、本日付でここ本社に配属されることになった。
彼はソフトウェア開発事業において更なる躍進をすすめていく上で重要なキーとなる人材だ。これからも営業をはじめ他部署とより一層の連携を強め、収益の拡大を達成したい。皆もそのつもりで、ますますの精進にはげむように」
次に課長が口を開いた。
「初めまして、遊佐裕彰です。これまでは研鑽も兼ねてアメリカで単独業務にあたっていましたが、このたび本社勤務となりました。これからはみなさんとより近しい距離で協力をふかめ、ますますの社の発展に貢献したいと思っています。海外生活が長く時にご迷惑をかけるかもしれませんが…どうぞよろしくお願いします」
当たり障りのない内容だけれども気さくな感じのする挨拶だった。
熱のこもった拍手がラウンジに割れるように響き、遊佐課長は満足そうに社員を見回した。
その時だった。
ぱちり
わたしと目が合った。