キミに恋の残業を命ずる
わわわ。
慌てて目をそらそうとしたけれど、
ふっ
キャラメル色の瞳が、穏やかに細まった。
まさに昨晩と同じ王子様スマイル…。
きゅっと胸が痛んだ…のと同時に、記憶がよみがえった。
唇に残した、やわらかく温かい感触も…。
まだ拍手が鳴りやまない中、課長が歩きだして人だかりを割るようにまっすぐにドアに向かった。
すらりとした体格なのにみんな圧倒されて、慌てて課長に道を作ってあげる。
ドアの近くに立っていたわたしは、隠れるように人影にひそめた。
その拍子に後ずさった男性の腕に当たって、手袋を落としてしまった。
慌てて手を伸ばした。
けれども、手袋をつかんだのは、見覚えのあるスラリとした指先だった…。