キミに恋の残業を命ずる
ひとつ、わたしに謎の名乗り方をした理由。
これは単純に、まだ異動が正式発表されていなかったからだろう。
誰もいない退社時間後の社内で働いていたのは、たぶん時差に慣れていなくてあの時間帯の方が集中できたから、なんだろう。


ふたつ、昨晩出会ったことを内緒にしてと言った理由。
やっぱり、残業禁止の職場に時間外業務しているのを知られるのが管理職としてまずかったから、なんだろう。


そして…最後、わたしにキスした理由。

……たぶん海外生活が長かったせいだ。
スキンシップで唇にキスする人がいると聞いたことがある。

つまりは単なる挨拶。
深い意味なんてない。

よって、いつまでも動揺する必要なんてない。



そもそも、わたしは恋愛に縁がない女だ。

男の人と初めて付き合ったのは大学生になってからで、所属していたサークルの先輩になかば押し切られるような感じで付き合ったのが始まり。


あんまり、いい思い出じゃなかった。
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