キミに恋の残業を命ずる
そんなことを考えながら、どうにか一日を終えようとしていた。


幸いなことに、今日はミスらしいミスもせず終われそうだ。

先輩たちも早々と帰り支度をしだしていて「帰る時、遊佐課長見てこようか」なんて話をしていて、わたしのことは目に入っていないみたい。


これはチャンス


退勤時間になったら、さっさと帰ろう。
そして今夜は楽しい映画でも借りてきて気分転換しよう…。


と思っていたんだけど。



「…ちょっと、三森くん」

「あ、はい?」


デスクの上をすこしずつ片付け始めていたわたしに、総務部の部長がちょっとちょっと、と手招いた。

ぎくぎくしながら、わたしは部長のデスクへ行った。


「なんでしょう…」

「急で申し訳ないけど、君今日は残業ね」

「ええ?」


部長からとはまさかの不意打ち。

つい露骨に嫌な顔をしてしまったわたしに、部長は気弱そうな笑みを作った。


「僕の意志じゃないよ。開発部からの命だよ」

「開発部?」

「ほら」


先輩たちをちらと見て声を潜めた。


「朝の課長。特別開発課の遊佐くんだよ」





えーーー…!
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