キミに恋の残業を命ずる
「ど、どういう…」
「ごめん、僕もわからないんだ。ただ『このあと特別開発課まで来るように伝えろ』ってそれだけで」
「そんな…」
「残念だったねぇ。これ、預かってきから」
と差し出されたのはカードキーだった。
わたしが持っている全社員用のものと同じデザインだけど…わざわざ渡してくれるということは、特別な用途に使うものなのかな…。
どういうことなの…。
この期に及んでなんの用があると言うんだろう…。わたしはすぐにでも彼のことを忘れたいのに…。
そうこうしている内に、退勤時間が過ぎたようだった。
「じゃ、そういうことだから、帰りここのロックお願いね」
先輩たちが我先に帰り始めたのに続いて、部長も席を離れた。
今日もわたしひとりだけがオフィスに取り残された。