キミに恋の残業を命ずる
わたしが今向かっている特別開発課は、このフロアの奥に用意されていた。
このたび遊佐課長が配属になって急遽つくられたスペースだけれど、重要機密の宝庫のため天井までパーテーションで仕切られていて、窓ガラスはすりガラスになっていた。
そして今は、真っ暗な中にその部屋だけが煌々と灯りが点いていた。
あそこに遊佐課長…がいるんだ…。
大きく息を吸って吐いて、気休めに緊張をほぐすと特別開発課のドアをノックした。
「失礼します…」
震えた小さな声を掛けたけれど、返事なし。
もう一度同じく繰り返したけれど、沈黙。
…いないのかな。
このまま帰っちゃおうか、と思ったけど、さっきもらったカードキーを思い出して、おそるおそるかざしてみた。
ピッ
…空いちゃった。
つまり、勝手に入っていいってこと…なのかな。
ある意味社長室より重要な場所なのに、いいのかなぁ…??
とにかく、そっとドアをあけた。