キミに恋の残業を命ずる
うたた寝レベルを超えて目覚める気配はゼロだ。
起こすべき?
うーん、でも疲れてるのかなぁ。
やっぱり時差呆けがきてるんだな。
今日は一日中挨拶回りや打ち合わせに動き回ってみたいだし(先輩情報)。
でも…人を呼び出しておいてなんだかなぁ。
昨晩はわたしのことバカにしたくせに。
「…自分だって居眠りこいてるじゃない」
「ん…」
わたしのぼやきに「うるさないなぁ」と言わんばかりに、課長が寝返りをうった。
衝撃でソファの背もたれにかかっていたジャケットが、ずると落ちてきた。
そのままじゃ、しわになっちゃう。
仕方ないなぁ、と近づいて上着を取ろうとした。
けど、幅のあるソファで手が届かない。
背もたれにそっと片手をついて、もう片手で上着を取ろうとした。
その時だった。
ぱちり
突然まぶたが開いて、あのキャラメル色の瞳が、まっすぐにわたしを見た。
「…寝込みを襲おうとするなんて、大胆だね」