キミに恋の残業を命ずる
我関せずで次々に席を立つ他の先輩たちとは反対に、帰り支度を終えたデスクにふたたび戻るわたし。
「ラッキー。三森がもたくた残ってくれてて助かったわぁ。今日の合コン、どこだっけ?」
「十二丁目のイタリアンだよ。今日はけっこう期待できるよーっ」
そんな会話が遠のくのを聞きながら、のろのろとパソコンを起動させる。
…やるせない。
でも、呑むしかなかった。
今日もわたしはドジをした。
データを間違えて削除してしまう、という目も当てられない初歩的ミス。
それをまた最初から拾ってデータ化するのに、あのふたりに手伝ってもらった。
たしかに、わたしが悪い。
でも、
きちんと整理されないで重要データが廃棄データと一緒のフォルダに入っていれば、誰だって処分してしまうじゃない?
前にも「整理しなくていいんですか?」って聞いたのに、「後でやる」ってめんどくさがられてそれきり。結局、忘れてしまってこうなっちゃったんじゃない。悪いのは、わたしだけじゃない。
ずさんな管理をしているのが悪いのよ!