キミに恋の残業を命ずる
不安でいっぱいになる。
わたしだって一応女の子。
まさかわたしみたいな平凡な子を…とは思うけれど、いやいや平凡な子こそ好みだっていう人もいるし…。
いや、課長みたいなより取り見取な人がありえない…考えすぎだ。
課長はきっと異動してきたばかりで、こういった謎だらけの本社の事情をよく知らないんだ。
…だからってどうして七階に上がろうとするのか皆目見当がつかないけれど…。
ぐるぐるぐるぐる…考えては次第に足取りが重くなっていく。
「怖い?」
そこへ、くるりと課長が振り返った。
わたしの心を読み取ったみたいに、苦笑いをうかべた。
「大丈夫。変なことなんてしないよ。…言っとくけど、ここまで秘密を明かすのを許したのは、キミが初めてだから」
どういう意味だろう…?
不可解な発言をするその顔にも、すこし緊張した表情が浮かんでいた。