キミに恋の残業を命ずる
困惑の表情を浮かべるわたしに、課長は微笑を浮かべた。
「ここが俺のオフィス」
「だってここは…」
どう見ても、自宅ですよね…?
ドアがあるからきっと洗面所や浴室だけでなく、もう一、二部屋はありそうな気がする。
やっぱり…ここは課長の…
「オフィス兼自宅…なんて言うのが正しいのかな」
「…つまり」
「俺は職場に住んでいるってこと」
「…」
「驚いた?でもまぁよくあるでしょ?オフィスとマンションが一緒に入ってる高層ビルとかさ。眺望はいいし、広いし、なかなか快適だよ」
と、脱いだジャケットをソファに投げると、リラックスした様子でのびをする課長。
「なにより、わざわざ職場にいって仕事しなくていいのが最大の魅力―――だった」
「だった…?え、じゃあつまり」
「そ。今までずっとここで仕事していた。アメリカ出張っていうのはウソ」
絶句。
もう言葉が出てこない。