キミに恋の残業を命ずる
いろんな謎の正体を一気に見せつけられて、スペッグの低いわたしの脳は処理に追いつけなくなっていた。
「幻の課長」の正体がわかっただけでなく「禁断の最上階」の正体まで…社の七不思議がいっきにとけてしまった…ってあれ?
ちょっとまってよ…。
じゃあ夜な夜な社内に出る男性社員の幽霊っていうのも、もしかして…。
という表情をで見やると、課長はいたずらっ子のような顔をしてウィンクした。
へなへなへな…
って効果音が付けられそうな態で、わたしはその場に腰を落としてしまった。
そうか…。
いくら前衛的とは言え、うちの社がやたら残業や休日出勤にうるさいのはこのためなんだ…。
社員が好き勝手に残業していたら秘密裏に住んでいる課長は外出したくてもできない。在宅勤務どころか軟禁状態になってしまう。
だから夜だけは無人にしていたんだ。
きっとわたしが残っていた夜もまさかあんな時間まで社員が残っているとは思わず、夜の街にでもくりだそうとしていたんだろう。
ところがわたしと遭遇してしまった…。
だから、会ったことは秘密にして、って言ったんだな。