キミに恋の残業を命ずる
…って思っても、
それに口に出して言えないのが、わたしのダメなところ。
引っ込み思案で内気なわたしは、気の強い先輩たちに呑まれてしまって、ドジなのをいいことに都合のいいように使われる存在になっていた。
いわばイジメの対象。
今日みたいに帰り際に残業を押し付けられるなんて、よくあることだった。
カタ…カタ…
キーを打つ音が、暗く静まりかえったオフィスに響いて不気味…。
もしかしたら、今残っているのってわたしだけかもしれないな…。
うちの社員はみんな退勤時間が早く、金曜ともなれば社内はあっという間にもぬけの殻になってしまう。
短時間効率を目指している、前衛的な社風だからだ。