キミに恋の残業を命ずる

気を取り直して、キッチンに向かった。

大きな冷蔵庫を開けさせてもらうと…


卵が…ある。
ハムもある。
ピーマンや玉ねぎもあるぞ。

あ、冷ごはんも…


意外にそろってるな。
レトルトばっかり入ってそうな想像してたけれど、冷ごはんなんか、昨日炊いたやつみたいだ。

お米ぐらい炊くよね。こんな定番材料だっておどろくものじゃない。


でも。



もしかして、作りに来てくれる人がいるのかな。



チク、と微かに胸が痛んだ。


…なにショック受けてるんだろわたし。

課長ほどの人なら、多少変わった生活をしていたってほっとく女の人はいないだろう。

こうして食材を調達して料理を作ってくれる人も何人かいるのかもしれない。


じゃあ…作った料理、密かに比較されちゃうのかな。なんだかやるせない。


「ふぅ」


考えてもしょうがない。
料理を作らなきゃ今夜は帰してもらえなさそうだし、ちゃっちゃとやっちゃいましょう。

一呼吸おいて、腕まくりをした。






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