キミに恋の残業を命ずる
「できました」


奮戦時間わずか十五分。

優雅に座って膝に乗せたノートパソコンをながめていた課長の前に、皿を置いた。


「早いね。どれどれ、なにを作ってくれたのかな」

「見ればわかりますよね。オムライスです」

「オムライス…」


うう…微妙な反応。
やっぱり気に入らなかった?お子様メニューは、やっぱり不味かった?
だって、これくらいしか思いつかなかったんだもん。あれだけの食材で、いったいどれだけ洒落た料理を作れと言うのですか。わたしは腕のいい料理人でもアイディア主婦でもないんですよ。



「やった。大好物なんだけど」



けど課長はにっこり。
しかも、初めて見るかもってくらい、満面の笑顔。


課長は早速ひとくち頬張った。


「…うん美味い。やっぱキミ、料理上手だね」


そして褒めてくれた。
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