キミに恋の残業を命ずる

わたしが勤めるこの会社は、オフィス関連の機器や消耗品を専門に扱う商社で、創業五十年を越え業界でも古株にあたる会社だけど、新規事業も着実に業績を収めていて収益も安定している。

それは幹部に敏腕が多いからというのもあるけれど…こういう社風にも対応できることが証明しているように、基本的にうちには優秀な社員が多いからだ。

…と言っても、わたしを含めた総務部の諸先輩方は例外と言えるかもしれないけど…。



わたし、三森亜海(みもりあみ)は、現在22歳。

地方から出て都市部の四大に通って後、奇跡的に内定をいただいたこの会社に今年から務めはじめた社会人一年生。


研修も兼ねてそれまで所属していた受付では、接客や郵便物の受け取りや簡単な書類作成などの庶務をやっていた。
単調で簡単な仕事ではあるけれど、のんびりとして優しいおばさま上司や同期の子たちとわきあいあいとできて楽しい毎日を送っていた。

けれど、社会は厳しい。

社会人生活にもすっかり慣れた秋に総務部への異動が決まって、そこから平凡な日常が一変した。
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