キミに恋の残業を命ずる
「あ、ありがとうございます」


うそ。こんなので良かったんだ…。

こっちが照れるくらいのよろこびように、わたしは正直おどろいていた。


なんか、イメージがどんどん変わっていくな。

おにぎりも美味しいって言ってくれたし、見た目とちがって素朴嗜好なのかもしれない。



「うん美味しかった。ごちそうさま」

「おそまつさまでした…」

「また作ってね」


さらりと言われた言葉に、どきと胸が鳴る。

けど、絆されたくはなかった。



「じゃ、これで精算できましたよね?」

「なにが?」

「なにが、って…。課長がわたしの仕事を手伝ってくださった代償ってやつです」

「あー…」


あー…って、もしかして忘れてた?


「いやいやまだだよ。そうあせらないでよ。もうちょっと俺に付き合って?」

「…」

「とりあえず座りなよ。お酒は飲める?」

「…はいまぁ」

「そ。じゃ、今度は俺がキミにご馳走しようかな」
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