キミに恋の残業を命ずる

そう言ってYシャツの袖をまくると、今度は課長がキッチンに行った。
シェイカーやグラスを出して、キッチンカウンターにたくさん並んでいる中から慣れた様子でお酒を選んで、シェイカーの中にそそいでいく。


シャカシャカシャカ…


そしてシェイクする姿はもう、バーテンそのもの。
すこしネクタイを寛げたYシャツ姿が、罪なくらいカッコいい…。


思わず見惚れているうちに、小さなカクテルグラスに可愛い白桃色のカクテルがそそがれる。

そして、別のグラスにはゴージャスな黄金色のカクテルを。


わたしに白桃色のグラスを渡すと、課長は黄金色のグラスをそっと目の前にかかげた。
オレンジの灯りとあいまって、それは深みを増した魅惑の色に変わる。

課長の瞳と同じ、キャラメル色に。


やっぱり完璧だ。
いったいどれだけの女の人が、こうしてカクテルを作ってもらって、彼に心を奪われてしまったのかな…。


「じゃあ、今日の再会を祝って」


乾杯


とグラスを鳴らして、そっと一口。


美味しい…。
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