キミに恋の残業を命ずる
「だからかな。キミの料理に感じる『温かさ』に惹かれてしまったのは。さっきも美味しかったな。家庭のオムライスって、あんなカンジだろ。お店のみたいにふわトロじゃなくてさ、ぺろんと一枚乗ってるだけの素朴な感じで。うれしかったな」
「そ、そんな風に言っていただけて、こっちこそうれしいです…!
…わたし、取り柄ったらこれくらいしかないですし、ご存じの通り仕事はできないし、先輩からはグズ扱いされるし…ほんとにダメな社員だから…っでっ!!」
急に脳天にチョップを食らった。
「いたーい!もうちょっとでカクテルこぼすところでしたよー!」
「まだ新米のくせに、ダメな社員とか言うな」
「そう名付けたの課長ですよぉ」
「…あれは…からかっただけ。キミへの叱咤激励」
って言うけど棘しか感じない言葉でしたよ?
わたしだって頑張ろうとしていたのに、ダメダメって連呼したのはそっちでしたけど!
と、じっとりとした目でにらむと、課長は墓穴を掘ったかのように口を濁した。