キミに恋の残業を命ずる
「もちろん命じたからには相応の代償は払うよ。もし、キミが先輩から残業を押し付けられたら、俺がやっつけてあげる。それだけじゃなく、キミに降りかかる理不尽なことは、全力で解消してあげるよ。
どう?悪くないと思わない?適材適所が叶った効率的な内容だ」

「こ、困ります…そんな」

「困る?いいね。俺、キミを困らせるの、好きだよ」

「からかわないでくださいっ」


たまらず、課長を突き飛ばそうとした。


でも、スラリとした身体はびくとも動かなくて…むしろぎゅうと抱き寄せられてしまった。


「嫌とは言わせない。これは上司の命令だ」

「そんな」

「『はい』は?早く言いなさい」


立場を笠に着た威圧的な言葉。

けど、その顔は微笑んでいた。
熱のこもった甘いキャラメル色の瞳で、わたしをじっと見つめていた。

憤りも融け消えるような、きれいな笑顔。
まるで王子様だ。
腹黒いイジワルな王子様。


もう苦しくて、わたしはうなづくように視線をそらした。
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