キミに恋の残業を命ずる
「どうしてわたしなんですか…。他にも尽くしてくれる女の人はいるでしょ…」
「そんなの決まってるよ。キミじゃなきゃ、ダメだからだ」
課長はわたしを解放すると、キッチンに行って冷蔵庫からボトルを取り出した。
「悪いのは、そう思わせたキミだよ」
ポン、と小さく音がして、課長は新しく出したグラスに中身をそそいた。
「じゃ、契約成立。もう一度乾杯といこうか」
そうして差し出されたシャンパンを、
もう、どうにでもなれ。
と自棄になって、ぐいっとあおった。
芳醇なアルコールを含んだ炭酸は、波乱な日々を暗示するかのように、強い刺激を喉に残したのだった。