キミに恋の残業を命ずる
「紅茶飲める?ミルクとレモンどっち入れたい?」

「じゃあ…レモンで…」


ティーポットから高々と紅茶が注がれて、瑞々しいレモンが入る。
上質な茶葉だとわかる芳醇な香りがレモンの酸味とあいまって鼻先をかすめて、戸惑う気持ちを落ち着かせてくれる。


その落着きは、一口飲んだだけでさらに深まった。


「すごく美味しい紅茶ですね」

「そう、良かった。遠慮しないで食べて?」


爽やかな風味で二日酔いの胸悪さがすこし緩和されると、瑞々しそうなパインヨーグルトが気になりだした。
パインを一切れ頬張った。酸味とヨーグルトのまろやかさが絶妙だ。

こうなれば、ハチミツの甘い香りに負けてしまう。


「パンケーキいただいてもいいですか」

「ぜひ。キミの口に合うかわからないけど」


そんな言葉、謙遜だってすぐに実感した。

ミルクをたっぷり入れたやさしい味が、ハチミツのほのかに酸味のあるこってりとした甘さによく合って、全然飽きの来ない美味しさだった。

…甘い顔立ちでこんなパンケーキを作ってしまうなんて、罪だ。
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