俺の騎士
希乃来side
今あるこの状況から、なんとか離脱したい、頭にはそれしかない。
周りでギャーギャーとうるさくて仕方ないのだ。
今日はトキに頼らず一日を過ごそうと思って、一人で学校に来たはいいものの、一人だと言うことがすぐに知れわたり、囲まれ、可哀想な小鹿の私。
けれど、ひとつ、利点を見つけた。都合がいい。
私が彼女らの話に合わせていたら、盗撮の話が出てきたのだ。
「今日から、ファンクラブ内で当番制にして帰りは送り届ける、ということにしない?」
「え"、私、会員じゃないのに!」
本当はファンクラブとか内密に作られた輩の肩を持つような行動は避けたい。(私以外は公式クラブだったらしい)
だが、都合のいいものはとことん利用する。
「それ、頼もうかな。同姓同士で話し相手がいるってのも新鮮だしな」
「ほんと?! 早速会長に伝えてくる!」
嬉々としながら廊下を走りわたる姿を見ると、一瞬、彼女の走る先にトキがいた気がしたが、あまりに遠くて、はっきりとは見えなかった。
トキと話さない為に、放課後を犠牲にした。これが、普段の女のままだったなら、本気でゲロものだ。
偽りの姿しか見ない彼女らにとって、これが私の趣味で、人格とでも思っているのだろう。
(昨日の今日で、怒りは鎮まらないだろうな。暫くは女子たちと神経すり減らす日々だ)
"これ以上謝るんだったら、俺、キレるよ?"
すう、と心に響いたこの言葉は、きっと、純粋に善意だけで私を囲い続けたのだ。
それと同時に見抜かれる私の弱さに、恥ずかしく、後ろめたい気持ちが勝ってしまい、このような由々しき事態に陥っているわけだ。
保身に走るのは、それが大部分を閉めていて、心の闇云々は大分消化されつつあった。自傷をしなくなったのが一番の証明だ。
あれから単純に女嫌いになってしまって、それは改善のめどがたたないけれど、表面上の上っ面だけの関係は人以上に上達していた。
それもこれも、トキ、のおかげなのだと、知らしめるように善意だけのあの言葉を脳裡で反芻させる。
そのなかで襲われる後ろめたさなどの原因には、目を瞑り気付かないふりをして女たちと別れて教室に戻った。