レンタル夫婦。
3章:同居スタート
――その後のことは、あんまり覚えていない。
たくさん説明されたり資料を見せられたりしたけれど、殆ど頭に入らなくて。
ずっとぼんやりしていたと、思う。
唯一覚えているのは、『湊って呼び捨てでいいよ』……そう、彼が言ったことだけ。
そしてあっという間に解散になり、家に帰っていつも通りの日常を過ごした。
時間はすぐに流れて、もう、同居一週間前へと迫っていた。
一週間前になると、ありささん達と住む部屋を見に行った。
必要な家具とかも揃えて。その時湊とはちょっと顔を合わせただけ。
そしてあっという間に同居が始まって……
――そして、今に至る。
時々聞こえるシャワーの音に、気が狂いそう。
だって。
廊下を少し進んだ先、お風呂の中で。
あの湊が、シャワーを浴びている訳で。
「もう、どうしたらいいの」
胸に手をあてて、そう呟いた。
ずっと煩く鳴りっぱなしの心臓。湊が帰ってきてから、壊れたみたいに主張しっぱなし。
「…………」
扉の方に顔を向ける。と、聞こえるシャワーの音。
それを誤魔化したくてテレビをつける。
リモコンで番組表のボタンを押す。
今日に限って、アイドルたちは出ていない。
仕方なく適当なバラエティー番組をつけた。
正直お笑いはよく分からない。
今話題、という芸人が出てネタを披露しているけど、ハッキリ言って、何が面白いのか理解出来ない。
小さく溜息を零してソファーに座る。
何となく面白くなくてニュース番組に変えた。それからスマホを取って弄る。
いつも利用してるSNSサイトを開いて……でも、湊とのことは公に出来ないって気付いて、『今日はドラマやってなくて見るものないー』みたいな、当たり触りのない内容を呟く。
それから、友達の書き込みとか見て、別のSNSサイトを開いて、色々画像あげてる友達にコメントしたりして。
段々夢中になり始めると、ガチャリと扉が開いた。
「お待たせ、みひろさん」
「……っ」
聞こえた声に顔を向ける。……と、Tシャツに下はジャージというラフな格好の湊が居た。
バスタオルで拭く髪の毛は濡れていて、……なんだろう、これが水も滴るイイ男ってやつ!?なんて、心の中で叫ぶ。
どうして、イケメンってジャージ着ててもイケメンなのかな。
そんなことを真剣に悩みながらスマホを置いて腰を上げる。
「ううん、あったまれた?」
「うん。……あ、一応お湯変えたから。イヤかと思って」
髪を拭きながら湊がそう告げる。
正直そのままで良かったけど! ……そんなことは言えなくて笑顔を浮かべた。
「わざわざ有難う」
大分ぎこちない笑顔になっている気がするけど、この際気にしない。
「ううん。オレこそ先譲ってくれてありがと。みひろさんも入ってきなよ」
湊はにっこりと笑って、そのままキッチンへと向かう。
彼が、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してそれに口を付けるまでをぼーっと見つめて、慌てて首を振った。
「わ、私も入ってきちゃうね……!」
そして逃げるように言って、部屋を後にした。
部屋からタオルとパジャマを取ってきて脱衣場に向かう。
扉を閉めて服を脱ぎ、浴室へと行く。
その扉を閉めてから、はぁっと大きなため息を吐いた。
どうしよう、本当に……心臓がもたない。
まだ、一日目なのに。
湊はきっと、私のことなんて何とも思っていなくて。
これは、契約で。
私は、彼に好きになって貰えるようにひと月過ごす。
そして彼も、私に好きになって貰えるように、ひと月過ごす。
そういう、ただの契約。
そんなの、分かってるのに……
「こんなの……好きに、なっちゃうよ」
小さく呟いて、シャワーに溶け込ませる。
あんまり早く出るのも、かと言って長風呂するのも違う気がする。
「どうしよ……」
たくさん説明されたり資料を見せられたりしたけれど、殆ど頭に入らなくて。
ずっとぼんやりしていたと、思う。
唯一覚えているのは、『湊って呼び捨てでいいよ』……そう、彼が言ったことだけ。
そしてあっという間に解散になり、家に帰っていつも通りの日常を過ごした。
時間はすぐに流れて、もう、同居一週間前へと迫っていた。
一週間前になると、ありささん達と住む部屋を見に行った。
必要な家具とかも揃えて。その時湊とはちょっと顔を合わせただけ。
そしてあっという間に同居が始まって……
――そして、今に至る。
時々聞こえるシャワーの音に、気が狂いそう。
だって。
廊下を少し進んだ先、お風呂の中で。
あの湊が、シャワーを浴びている訳で。
「もう、どうしたらいいの」
胸に手をあてて、そう呟いた。
ずっと煩く鳴りっぱなしの心臓。湊が帰ってきてから、壊れたみたいに主張しっぱなし。
「…………」
扉の方に顔を向ける。と、聞こえるシャワーの音。
それを誤魔化したくてテレビをつける。
リモコンで番組表のボタンを押す。
今日に限って、アイドルたちは出ていない。
仕方なく適当なバラエティー番組をつけた。
正直お笑いはよく分からない。
今話題、という芸人が出てネタを披露しているけど、ハッキリ言って、何が面白いのか理解出来ない。
小さく溜息を零してソファーに座る。
何となく面白くなくてニュース番組に変えた。それからスマホを取って弄る。
いつも利用してるSNSサイトを開いて……でも、湊とのことは公に出来ないって気付いて、『今日はドラマやってなくて見るものないー』みたいな、当たり触りのない内容を呟く。
それから、友達の書き込みとか見て、別のSNSサイトを開いて、色々画像あげてる友達にコメントしたりして。
段々夢中になり始めると、ガチャリと扉が開いた。
「お待たせ、みひろさん」
「……っ」
聞こえた声に顔を向ける。……と、Tシャツに下はジャージというラフな格好の湊が居た。
バスタオルで拭く髪の毛は濡れていて、……なんだろう、これが水も滴るイイ男ってやつ!?なんて、心の中で叫ぶ。
どうして、イケメンってジャージ着ててもイケメンなのかな。
そんなことを真剣に悩みながらスマホを置いて腰を上げる。
「ううん、あったまれた?」
「うん。……あ、一応お湯変えたから。イヤかと思って」
髪を拭きながら湊がそう告げる。
正直そのままで良かったけど! ……そんなことは言えなくて笑顔を浮かべた。
「わざわざ有難う」
大分ぎこちない笑顔になっている気がするけど、この際気にしない。
「ううん。オレこそ先譲ってくれてありがと。みひろさんも入ってきなよ」
湊はにっこりと笑って、そのままキッチンへと向かう。
彼が、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してそれに口を付けるまでをぼーっと見つめて、慌てて首を振った。
「わ、私も入ってきちゃうね……!」
そして逃げるように言って、部屋を後にした。
部屋からタオルとパジャマを取ってきて脱衣場に向かう。
扉を閉めて服を脱ぎ、浴室へと行く。
その扉を閉めてから、はぁっと大きなため息を吐いた。
どうしよう、本当に……心臓がもたない。
まだ、一日目なのに。
湊はきっと、私のことなんて何とも思っていなくて。
これは、契約で。
私は、彼に好きになって貰えるようにひと月過ごす。
そして彼も、私に好きになって貰えるように、ひと月過ごす。
そういう、ただの契約。
そんなの、分かってるのに……
「こんなの……好きに、なっちゃうよ」
小さく呟いて、シャワーに溶け込ませる。
あんまり早く出るのも、かと言って長風呂するのも違う気がする。
「どうしよ……」