レンタル夫婦。
***
鶏肉のトマトソース煮と和風サラダにご飯。
それを並んだ食卓で向かい合ったまま、私たちは無言で食事をしていた。
いただきます、と挨拶して、一口食べておいしい、って言ってくれて。
そこまでは笑顔だった湊は、何も言わない。
湊が何も言わないから、私も何を話せば良いか分からなくて、しーんとした空間が広がっていた。
「ね、ねぇ湊……? テレビでもつけない……?」
気まずさが耐えられなくてそう声をかけると、湊は目線をあげてリモコンを取り、テレビをつけた。
「あ!」
……と、大好きな霰の三宮くんが映って、私はつい声をあげてしまう。
「ん? これ見る?」
湊はそう言ってそのチャンネルにした。
どうしようどうしよう、録画するの忘れてた……!
「……この人。可愛いよね」
「え?」
私が一人心の中でパニックになっていると、湊がそう呟く。
その声でテレビへと顔を向ける。
バラエティー番組だからか何人ものタレントや女優が映っていた。
湊に視線を戻すと、湊が箸を置いて指を差す。
「この……歌手?」
湊が示したのは最近デビューしたばかりのシンガーソングライターだった。
確かに歌が上手いけど、そんなに可愛いとは思えなくて。
「そう……かな? こっちの女優の方が美人じゃない?」
つい、そう口から零れていた。
「ふーん? じゃあ男だったら? どの人?」
湊はよく分からないリアクションをして、そう訊いてくる。
「えっ……」
三宮くん、と言っていいのか分からなかった。
あんまり、アイドル好きって知られない方が良いのかなって思って。
「えーと……」
私は悩みながら順番に映る芸能人を見つめる。
「この中なら……あの人、かなぁ? 今一番右に映った人」
今話題の若手俳優が映って、私は彼を示した。
「へぇ、今人気だもんね。どのドラマ見ても出てるし」
湊はそう、頷いた。
何だか、チクリと胸が痛む。
……でも、アイドルが好きとは言えなかった。
もしも言ったら、湊を顔だけで選んだのがバレてしまうから。
「みひろさん、今日はお風呂先に入りなよ」
TVを見ながらのんびり食事を済ませ、食器を片付けているとそう声をかけられた。
顔をあげて湊を見る。
「いいの?」
「うん、昨日はオレが先だったから」
「ありがと。それじゃあ、お言葉に甘えて先に入るね」
鶏肉のトマトソース煮と和風サラダにご飯。
それを並んだ食卓で向かい合ったまま、私たちは無言で食事をしていた。
いただきます、と挨拶して、一口食べておいしい、って言ってくれて。
そこまでは笑顔だった湊は、何も言わない。
湊が何も言わないから、私も何を話せば良いか分からなくて、しーんとした空間が広がっていた。
「ね、ねぇ湊……? テレビでもつけない……?」
気まずさが耐えられなくてそう声をかけると、湊は目線をあげてリモコンを取り、テレビをつけた。
「あ!」
……と、大好きな霰の三宮くんが映って、私はつい声をあげてしまう。
「ん? これ見る?」
湊はそう言ってそのチャンネルにした。
どうしようどうしよう、録画するの忘れてた……!
「……この人。可愛いよね」
「え?」
私が一人心の中でパニックになっていると、湊がそう呟く。
その声でテレビへと顔を向ける。
バラエティー番組だからか何人ものタレントや女優が映っていた。
湊に視線を戻すと、湊が箸を置いて指を差す。
「この……歌手?」
湊が示したのは最近デビューしたばかりのシンガーソングライターだった。
確かに歌が上手いけど、そんなに可愛いとは思えなくて。
「そう……かな? こっちの女優の方が美人じゃない?」
つい、そう口から零れていた。
「ふーん? じゃあ男だったら? どの人?」
湊はよく分からないリアクションをして、そう訊いてくる。
「えっ……」
三宮くん、と言っていいのか分からなかった。
あんまり、アイドル好きって知られない方が良いのかなって思って。
「えーと……」
私は悩みながら順番に映る芸能人を見つめる。
「この中なら……あの人、かなぁ? 今一番右に映った人」
今話題の若手俳優が映って、私は彼を示した。
「へぇ、今人気だもんね。どのドラマ見ても出てるし」
湊はそう、頷いた。
何だか、チクリと胸が痛む。
……でも、アイドルが好きとは言えなかった。
もしも言ったら、湊を顔だけで選んだのがバレてしまうから。
「みひろさん、今日はお風呂先に入りなよ」
TVを見ながらのんびり食事を済ませ、食器を片付けているとそう声をかけられた。
顔をあげて湊を見る。
「いいの?」
「うん、昨日はオレが先だったから」
「ありがと。それじゃあ、お言葉に甘えて先に入るね」