レンタル夫婦。
***
お風呂から出ると、湊はすぐに交代で浴室へと消えた。
だから私はソファーに座って昨日少し雑になったスキンケアを始めた。
導入美容液をつけて化粧水を塗って、乳液を薄くつけてクリームで仕上げる。
顔のお手入れをしっかりして、それからパジャマのズボンを膝までまくって、両方のふくらはぎをマッサージオイルでマッサージしていく。
一日座りっぱなしだからむくみが凄い。
一日でもケアをサボるとダメだなーなんて、思っていると、ガチャリと扉が開いた。
「!? みな、」
「何してるの?」
「わ、えーと……これは、」
嘘。……だってさっき入ったばっかりだよね?
嘘もう出たの? どうしよう、なんてまた内心パニックになり始める。
「え、えっと……ケアとか? ごめんね、部屋でやれって感じだよねっ」
あわあわとパジャマを戻してテーブルに広げたセットを纏める。
「ごめん、すぐ部屋行くから……こんな早く来ると思わなくてっ」
「そりゃ男だし、そんな長風呂しないけど……それより」
「え?」
「謝りすぎだよ、みひろさん」
必死で片付ける私に、湊は近付きながらそう告げる。
おかしそうに笑って、それから私の隣に腰を下ろした。
「悪いことしてないんだし、そんなすぐ謝っちゃ、ダメ」
「でも……」
「でも、も禁止。……それより、髪、ちゃんと乾かさないと風邪引いちゃうよ」
ふわり、と頭にタオルを被せられる。
そのままバスタオル越しに湊の手が私の頭に触れる。
細いけど、ちょっと骨っぽくてごつごつした手。
お風呂上がりだからかあったかくて、……凄く優しく頭を拭かれる。
「み、湊……も、大丈夫だから」
「だーめ。ちゃんと拭かないと」
「……自分で、出来るよ」
また、心臓がドキドキ鳴って落ち着かない。
指が、頭に触れてるだけで。しかも直接じゃなくタオル越しなのに。
どうしてこんなにドキドキするんだろう。
「湊、本当、もういいから」
「そう? ……じゃああとは自分でやって」
ドキドキしっぱなしで苦しくて、少し冷たく言ってしまう。
少し残念そうに手を離した湊は、手で触れていた場所に軽くキスしてソファーから立ち上がった。
それからキッチンの方へ行くのを見届けて、私は自分の頭を拭く。
耐えられなくて、ドライヤーを取りにいくという名目でその場から離れようとすると声をかけられる。
「みひろさん」
「何?」
入口の所で足を止めて振り返った。
ミネラルウォーターを飲みながらこちらを見る湊が映る。
「明日はオレ、朝早いから。先出るね」
「そうなの? 何時ごろ?」
「うん。6時ぐらいには出なきゃなくて」
「え、そっか、早いね……夜は早いってこと?」
「んー……夜も遅いかな。ご飯いらないし、先寝てて」
「うん、わかった」
「ごめんね。……おやすみみひろさん」
「ううん、……おやすみ」
そのままぎこちなく挨拶をして部屋へと戻る。
さっき持ってきたセットを片付けベッドへ座り、ドライヤーで頭を乾かしながら考える。
「今日は11時で、明日は6時……?」
シフト制の仕事なのかな? なんて考える。
……何の仕事をしてるかは訊いても良いのかな。
プロフには何て書いてあったっけ……?
「私、湊のこと……本当に何も知らないんだ」
そう思ったら、何だか……きゅって胸が締め付けられて苦しくなる。
そのよく分からない感覚が嫌で、私は髪を乾かしさっさと眠りについた。
お風呂から出ると、湊はすぐに交代で浴室へと消えた。
だから私はソファーに座って昨日少し雑になったスキンケアを始めた。
導入美容液をつけて化粧水を塗って、乳液を薄くつけてクリームで仕上げる。
顔のお手入れをしっかりして、それからパジャマのズボンを膝までまくって、両方のふくらはぎをマッサージオイルでマッサージしていく。
一日座りっぱなしだからむくみが凄い。
一日でもケアをサボるとダメだなーなんて、思っていると、ガチャリと扉が開いた。
「!? みな、」
「何してるの?」
「わ、えーと……これは、」
嘘。……だってさっき入ったばっかりだよね?
嘘もう出たの? どうしよう、なんてまた内心パニックになり始める。
「え、えっと……ケアとか? ごめんね、部屋でやれって感じだよねっ」
あわあわとパジャマを戻してテーブルに広げたセットを纏める。
「ごめん、すぐ部屋行くから……こんな早く来ると思わなくてっ」
「そりゃ男だし、そんな長風呂しないけど……それより」
「え?」
「謝りすぎだよ、みひろさん」
必死で片付ける私に、湊は近付きながらそう告げる。
おかしそうに笑って、それから私の隣に腰を下ろした。
「悪いことしてないんだし、そんなすぐ謝っちゃ、ダメ」
「でも……」
「でも、も禁止。……それより、髪、ちゃんと乾かさないと風邪引いちゃうよ」
ふわり、と頭にタオルを被せられる。
そのままバスタオル越しに湊の手が私の頭に触れる。
細いけど、ちょっと骨っぽくてごつごつした手。
お風呂上がりだからかあったかくて、……凄く優しく頭を拭かれる。
「み、湊……も、大丈夫だから」
「だーめ。ちゃんと拭かないと」
「……自分で、出来るよ」
また、心臓がドキドキ鳴って落ち着かない。
指が、頭に触れてるだけで。しかも直接じゃなくタオル越しなのに。
どうしてこんなにドキドキするんだろう。
「湊、本当、もういいから」
「そう? ……じゃああとは自分でやって」
ドキドキしっぱなしで苦しくて、少し冷たく言ってしまう。
少し残念そうに手を離した湊は、手で触れていた場所に軽くキスしてソファーから立ち上がった。
それからキッチンの方へ行くのを見届けて、私は自分の頭を拭く。
耐えられなくて、ドライヤーを取りにいくという名目でその場から離れようとすると声をかけられる。
「みひろさん」
「何?」
入口の所で足を止めて振り返った。
ミネラルウォーターを飲みながらこちらを見る湊が映る。
「明日はオレ、朝早いから。先出るね」
「そうなの? 何時ごろ?」
「うん。6時ぐらいには出なきゃなくて」
「え、そっか、早いね……夜は早いってこと?」
「んー……夜も遅いかな。ご飯いらないし、先寝てて」
「うん、わかった」
「ごめんね。……おやすみみひろさん」
「ううん、……おやすみ」
そのままぎこちなく挨拶をして部屋へと戻る。
さっき持ってきたセットを片付けベッドへ座り、ドライヤーで頭を乾かしながら考える。
「今日は11時で、明日は6時……?」
シフト制の仕事なのかな? なんて考える。
……何の仕事をしてるかは訊いても良いのかな。
プロフには何て書いてあったっけ……?
「私、湊のこと……本当に何も知らないんだ」
そう思ったら、何だか……きゅって胸が締め付けられて苦しくなる。
そのよく分からない感覚が嫌で、私は髪を乾かしさっさと眠りについた。