レンタル夫婦。
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観覧車を降り、……また湊に手伝ってもらいながら降りて、手を引かれ街並みを見ながら歩く。
湊が次に提示したのは、この辺りで有名なカフェだった。
ベッド席があるというそこは、遅めのお昼時という時間もあってカップルで賑わっていた。
少しだけ並んで待って、店員に通される。
本当に部屋みたいな場所にとても大きなベッドがあった。
仕切られているわけではなくて、広いベッドの上でいちゃいちゃしてるカップル達が映る。
何だか少し恥ずかしくなったものの、やっぱり湊にエスコートされて案内された場所へと腰を下ろした。
「みひろさん、何頼む?」
そう言ってメニューを渡された。
「ありがと。……えーと、」
どれもこれもおいしそうに映る。
色々悩んで特製ランチセットというのを頼むことにした。
「決まった、これにする。湊は?」
「んー、オレも同じのにしようかな」
そう言った湊は店員さんに二人分のそのセットを頼んだ。
私のドリンクはホットのコーヒーにしてもらう。
湊はオレンジジュースにしたみたい。
何だかちょっとだけ意外に感じる。
「ベッドって……変な感じだね?」
ベッド席に並んで座り、注文したメニューが来るのを待つ。
湊は何も言わずに微笑んで私の手を取り、恋人繋ぎで握った。
途端に恥ずかしくなって顔を逸らすと、近くのカップルが何度もキスをしているのが映る。
そのせいで益々恥ずかしくなって俯くと、耳元で湊の声が響いた。
「……みひろさんまたそっちのモード? さっきの強気なのはどこいったの」
「だって恥ずかしい……」
耳元で響く普段より少しだけ低い声に心臓が鳴る。
顔が熱くなるのを感じてもっと俯くと、湊は更に追い打ちをかけるように呟いた。
「……照れても可愛いだけなんだけど」
「っ」
もう無理、心臓もたない……!
そう思った時店員さんの声がして、頼んだ料理を目の前に渡された。
ナイスタイミング、なんて心の中で叫んで赤くなった顔を上げる。
「み、みなと……温かいうちに、食べよ?」
「……そうだね、食べようか」
湊はあっさりと引いて体を離す。
それにホッと息を吐いて改めてメニューを見た。
結構大きなプレートに、何種類かのお皿が乗っている。
パンがメインで、他はビーフシチューやチャウダーのようだった。
「うわ、おいしそう……」
温かな湯気が立ち、香る食欲を刺激する匂いに私はそう呟いた。
「いただきます!」
それから軽く手を合わせてフォークを取る。
サラダからフォークを刺して食べ始めると、湊も同じように挨拶をして食べ始めた。
サラダの野菜は新鮮、焼きたてのパンは香ばしくて、他のおかずも味がしっかりしていた。
つい緩む頬をそのままに湊の方を向く。
湊はおかしそうに笑った。
「うん! すごく食べやすいし、……こうやってベッドで食べるのも素敵だね」
もしも家で、ベッドの上でご飯を食べるなんてことになったらそれはお行儀が悪いんだろうけど。
こういう場所でこういう風に過ごすのは悪くないと思う。
気付いたら私の緊張も解れたみたいで、湊との距離も近付いていた。
肩が触れる距離で食事を続け、このあとはどうするかなどを話しながら素敵な時間を過ごした。
そのあとのドリンクをゆったりと飲み、大満足でカフェを後にする。
そのあとはショッピングモールを軽く見て、海の近い公園へ行った。
意外と人の少ないそこを進んで、二人並んでベンチへ座る。
青い空が少しずつ夕焼けに変わっていって、すごく景色が綺麗だった。
「綺麗……」
つい呟くと湊はそうだね、と微笑んだ。
湊はこういう景色とか風景が好きなのかなって思って、それを声に出して問う。
「湊は、海がすきなの?」
「んー……そうだね、まぁ落ち着くかな」
「そうなんだ。良いね、こうやってのんびりするのも」
映画を見たり一日中テーマパークを巡るのも素敵だけど。
たまにはこうやってのんびりするのも悪くないように思う。
「湊……今日は、誘ってくれてありがとう。本当に楽しかったよ」
「そう? そう言って貰えると考えた甲斐あったよ」
湊が本当に嬉しそうに笑うから、私も嬉しくなって、頭を湊の肩へと乗せる。
湊の右手が私の肩を抱き、そのまま静かに波の音を聞いた。
辺りにはたくさん人がいるのに、それだけで二人だけ遮断されたみたいな気分になる。
本当に幸せで、ずっとこの時間が続けば良いのにって、そう思った。
「……そろそろ帰ろっか。みひろさん、晩御飯どうする? この辺りにもあるし、帰りにどこか寄っても良いけど」
「そうだな……湊はお腹空いてる? 私、割とお昼のがまだ残ってて」
ランチを食べすぎたせいであまりお腹は空いてなかった。
正直にそれを伝えると湊は優しく微笑んだ。
「じゃあ帰ろっか。家で食べても良いし。……何なら、オレが何か作るよ」
「本当? ……何か、同じ家に帰るのってくすぐったいね」
朝起きて一緒に家を出て。
一日中外で過ごして。
更に同じ場所に帰る、なんて経験は初めてで。
じわじわとそれがこみ上げて私は頬を緩める。
「まぁ、夫婦だからね。……じゃあ帰ろうか」
湊はそう言って立ち上がり、私へと手を出した。
それを取って私も腰を上げる。
そのまま真っ直ぐ駅へと向かい、帰路に着いた。
観覧車を降り、……また湊に手伝ってもらいながら降りて、手を引かれ街並みを見ながら歩く。
湊が次に提示したのは、この辺りで有名なカフェだった。
ベッド席があるというそこは、遅めのお昼時という時間もあってカップルで賑わっていた。
少しだけ並んで待って、店員に通される。
本当に部屋みたいな場所にとても大きなベッドがあった。
仕切られているわけではなくて、広いベッドの上でいちゃいちゃしてるカップル達が映る。
何だか少し恥ずかしくなったものの、やっぱり湊にエスコートされて案内された場所へと腰を下ろした。
「みひろさん、何頼む?」
そう言ってメニューを渡された。
「ありがと。……えーと、」
どれもこれもおいしそうに映る。
色々悩んで特製ランチセットというのを頼むことにした。
「決まった、これにする。湊は?」
「んー、オレも同じのにしようかな」
そう言った湊は店員さんに二人分のそのセットを頼んだ。
私のドリンクはホットのコーヒーにしてもらう。
湊はオレンジジュースにしたみたい。
何だかちょっとだけ意外に感じる。
「ベッドって……変な感じだね?」
ベッド席に並んで座り、注文したメニューが来るのを待つ。
湊は何も言わずに微笑んで私の手を取り、恋人繋ぎで握った。
途端に恥ずかしくなって顔を逸らすと、近くのカップルが何度もキスをしているのが映る。
そのせいで益々恥ずかしくなって俯くと、耳元で湊の声が響いた。
「……みひろさんまたそっちのモード? さっきの強気なのはどこいったの」
「だって恥ずかしい……」
耳元で響く普段より少しだけ低い声に心臓が鳴る。
顔が熱くなるのを感じてもっと俯くと、湊は更に追い打ちをかけるように呟いた。
「……照れても可愛いだけなんだけど」
「っ」
もう無理、心臓もたない……!
そう思った時店員さんの声がして、頼んだ料理を目の前に渡された。
ナイスタイミング、なんて心の中で叫んで赤くなった顔を上げる。
「み、みなと……温かいうちに、食べよ?」
「……そうだね、食べようか」
湊はあっさりと引いて体を離す。
それにホッと息を吐いて改めてメニューを見た。
結構大きなプレートに、何種類かのお皿が乗っている。
パンがメインで、他はビーフシチューやチャウダーのようだった。
「うわ、おいしそう……」
温かな湯気が立ち、香る食欲を刺激する匂いに私はそう呟いた。
「いただきます!」
それから軽く手を合わせてフォークを取る。
サラダからフォークを刺して食べ始めると、湊も同じように挨拶をして食べ始めた。
サラダの野菜は新鮮、焼きたてのパンは香ばしくて、他のおかずも味がしっかりしていた。
つい緩む頬をそのままに湊の方を向く。
湊はおかしそうに笑った。
「うん! すごく食べやすいし、……こうやってベッドで食べるのも素敵だね」
もしも家で、ベッドの上でご飯を食べるなんてことになったらそれはお行儀が悪いんだろうけど。
こういう場所でこういう風に過ごすのは悪くないと思う。
気付いたら私の緊張も解れたみたいで、湊との距離も近付いていた。
肩が触れる距離で食事を続け、このあとはどうするかなどを話しながら素敵な時間を過ごした。
そのあとのドリンクをゆったりと飲み、大満足でカフェを後にする。
そのあとはショッピングモールを軽く見て、海の近い公園へ行った。
意外と人の少ないそこを進んで、二人並んでベンチへ座る。
青い空が少しずつ夕焼けに変わっていって、すごく景色が綺麗だった。
「綺麗……」
つい呟くと湊はそうだね、と微笑んだ。
湊はこういう景色とか風景が好きなのかなって思って、それを声に出して問う。
「湊は、海がすきなの?」
「んー……そうだね、まぁ落ち着くかな」
「そうなんだ。良いね、こうやってのんびりするのも」
映画を見たり一日中テーマパークを巡るのも素敵だけど。
たまにはこうやってのんびりするのも悪くないように思う。
「湊……今日は、誘ってくれてありがとう。本当に楽しかったよ」
「そう? そう言って貰えると考えた甲斐あったよ」
湊が本当に嬉しそうに笑うから、私も嬉しくなって、頭を湊の肩へと乗せる。
湊の右手が私の肩を抱き、そのまま静かに波の音を聞いた。
辺りにはたくさん人がいるのに、それだけで二人だけ遮断されたみたいな気分になる。
本当に幸せで、ずっとこの時間が続けば良いのにって、そう思った。
「……そろそろ帰ろっか。みひろさん、晩御飯どうする? この辺りにもあるし、帰りにどこか寄っても良いけど」
「そうだな……湊はお腹空いてる? 私、割とお昼のがまだ残ってて」
ランチを食べすぎたせいであまりお腹は空いてなかった。
正直にそれを伝えると湊は優しく微笑んだ。
「じゃあ帰ろっか。家で食べても良いし。……何なら、オレが何か作るよ」
「本当? ……何か、同じ家に帰るのってくすぐったいね」
朝起きて一緒に家を出て。
一日中外で過ごして。
更に同じ場所に帰る、なんて経験は初めてで。
じわじわとそれがこみ上げて私は頬を緩める。
「まぁ、夫婦だからね。……じゃあ帰ろうか」
湊はそう言って立ち上がり、私へと手を出した。
それを取って私も腰を上げる。
そのまま真っ直ぐ駅へと向かい、帰路に着いた。