レンタル夫婦。
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「……お風呂行く?」

行為が終わって何となく布団でぼーっとする。
やっぱり湊は慣れていて……でもすごく優しかった。
何とも言えない気持ちが私を浸食していく。
それが嫌で、みなとのその問いかけに頷いた。

「うん。さっき髪とかは洗わなかったから……行ってくる。みなとは?」
「オレはもう少ししたら行くよ。先行ってきなよ」
「うん……じゃあいくね」

肌蹴た浴衣を直してタオルや洗顔セットなどの準備をする。
そのまま鍵を持って部屋をあとにした。
既に一度通っている廊下を通って大浴場へ向かう。
何とも言えない不思議な気持ちが私を支配していた。

……何で、だろう。
身体を重ねたら、満たされる気がしたのに。
小さな違和感が拭えなくて……それが少しずつ広がっていく。

もやもやしたままお風呂に入る。
今度は髪も洗って化粧も落として……としっかり入浴してお風呂を出た。
それから部屋へと戻る。
部屋に戻ると湊は居なかった。

タオルを干して、布団に倒れ込む。
色んなことがいっぺんに押し寄せて頭が痛い。

「私たち……同じ気持ちじゃないのかな……」

ぽつり、気持ちが勝手に言葉になった。
湊は私を好きだと言ってくれた。
私も好きだと伝えた。
キスもしたしそれ以上も……。
普通に考えたら恋人同士と何も変わらないのに、どうしてもやもやするんだろう。
分からなくて、ぐるぐると頭を悩ませる。

そうしているうちに疲れていたのか眠りに落ちていた……。











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