レンタル夫婦。
**
――残り、15日。
気付いたら、朝日が窓から差し込んでいた。
「ん……」
それが眩しくて身を捩る。
ごろん、と転がると隣の布団に湊が寝ていた。
「!」
驚いてがばっと身を起こす。
辺りを見回して漸く、ここが旅館であるのを思い出した。
湊はまだ眠っているみたいで、無防備な寝顔がこちらを向いていた。
よく考えれば湊の寝ている姿を見るのはソファーでのうたた寝以外は初めてで、変にドキドキしてしまう。
眠っていても湊は本当に整った顔をしていると思う。
閉じた瞼も睫毛が長くて、鼻筋も、形の良い唇も……まで考えて、昨日のことが鮮明に思い出されて顔が熱くなる。
(昨日私、湊と……)
これから私達はどうなるのかなって考える。
そっと手を伸ばして湊の髪に触れてみた。
「ん………」
小さく身じろぎをする。
一緒に生活していて思ったけど、湊は、あんまり朝が得意じゃないみたいで。
起こすのも可哀想で手を離す。
時計を見たらまだ5時半だった。
朝風呂に行こうと決めて、タオルを持って部屋を後にした。
**
露天風呂には、それなりの人がいた。
意外と朝に入る人は多いように思う。
朝の空気は、凄く好きだ。
夜とは違った景色が広がっていて、何とも言えない気持ちになる。
お湯も気持ちが良いし、肌に触れる空気も気持ちが良い。
ほうっと息を吐いてお湯を掬って肩にかけた。
全身にじわじわと血液が巡って、覚醒するような気持になる。
(湊……起きたかな)
朝食は確か、6時半から8時半までだった気がする。
昨夜食べ過ぎたし私は食べなくても良いんだけど……一応起こした方が良いかな、という結論に達する。
のんびりと温まって部屋へと戻った。
**
「おはよう、みひろさん。お風呂行ってたんだ?」
「おはよ、起きたんだね」
部屋に戻ると湊は布団の上に座っていた。
前髪が少し跳ねていて可愛い。
ついクスリと笑うと首を傾げられる。
「何?」
「……ここ、寝癖」
しゃがんでそっと湊の髪に触れる。
至近距離で目が合った。
湊はふっと微笑んで顔を逸らした。
「あーうん、ちょっと直してくるよ」
そう言って立ち上がり洗面台の方に行く。
怒った? なんて少しだけ考えたけれど、寝起きだからかと思って追及はやめた。
**
湊も朝風呂に行くと言ったので、その間に私は化粧や着替えを済ませた。
戻ってきた湊と一緒に朝食会場へと向かう。
朝はバイキングらしくて、少し少な目にとった。
野菜を中心に食べる。
湊は、朝は本当に食べないから、とったのはコーヒーと小さなロールパン一個だけだった。
「湊、これだけで大丈夫?」
近くのテーブルでは全種類かと思えるほどの量を何枚もの皿に乗せている男性が居る。
ついそれと比べてしまって問うと、ぼーっとした感じで首を振られた。
「ん、へーき」
だからこんなに細いんだなと納得する。
自分が食べ過ぎている気分になって、少しだけ気まずくなった。
そんなことを気にしてもどうしようもないのに。
**
朝ごはん中はそんなに喋るでもなく割と早めに切り上げた。
部屋に戻って荷物を纏めてチェックアウトをする。
湊が手続きをするのを待ってお土産屋さんを覗いた。
昨日飲んだ果実酒を見つけてそれをかごにいれる。
「……やっぱりそれ買うんだ」
戻ってきた湊にそう言われて私は顔を向ける。
「うん。湊は? 何か買う?」
「んー……オレはいいかな」
「そう? じゃあ会計してくるね」
並んでいないレジに行って支払いを済ませる。
財布を出した所でそういえば、と気が付いた。
受け取った商品の袋を持って湊の所へ行く。
「ねぇ湊、お金、どうしたら良い? 今渡そうか」
「お金?」
「うん、宿泊費。半分出すよ」
「いや、いいよ。そういうの。……言ったでしょ、気にしないでって」
「でも、」
「あ、送迎バス来るよ」
年下の湊に全部出してもらうのは悪い気がして提案したものの、あっさり拒否されてしまう。
食い下がろうとした私の頭をポンと叩いて、湊は荷物を持って出口へと向かう。
「……」
何となく違和感を覚えながらも、私もそれに続いた。
――残り、15日。
気付いたら、朝日が窓から差し込んでいた。
「ん……」
それが眩しくて身を捩る。
ごろん、と転がると隣の布団に湊が寝ていた。
「!」
驚いてがばっと身を起こす。
辺りを見回して漸く、ここが旅館であるのを思い出した。
湊はまだ眠っているみたいで、無防備な寝顔がこちらを向いていた。
よく考えれば湊の寝ている姿を見るのはソファーでのうたた寝以外は初めてで、変にドキドキしてしまう。
眠っていても湊は本当に整った顔をしていると思う。
閉じた瞼も睫毛が長くて、鼻筋も、形の良い唇も……まで考えて、昨日のことが鮮明に思い出されて顔が熱くなる。
(昨日私、湊と……)
これから私達はどうなるのかなって考える。
そっと手を伸ばして湊の髪に触れてみた。
「ん………」
小さく身じろぎをする。
一緒に生活していて思ったけど、湊は、あんまり朝が得意じゃないみたいで。
起こすのも可哀想で手を離す。
時計を見たらまだ5時半だった。
朝風呂に行こうと決めて、タオルを持って部屋を後にした。
**
露天風呂には、それなりの人がいた。
意外と朝に入る人は多いように思う。
朝の空気は、凄く好きだ。
夜とは違った景色が広がっていて、何とも言えない気持ちになる。
お湯も気持ちが良いし、肌に触れる空気も気持ちが良い。
ほうっと息を吐いてお湯を掬って肩にかけた。
全身にじわじわと血液が巡って、覚醒するような気持になる。
(湊……起きたかな)
朝食は確か、6時半から8時半までだった気がする。
昨夜食べ過ぎたし私は食べなくても良いんだけど……一応起こした方が良いかな、という結論に達する。
のんびりと温まって部屋へと戻った。
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「おはよう、みひろさん。お風呂行ってたんだ?」
「おはよ、起きたんだね」
部屋に戻ると湊は布団の上に座っていた。
前髪が少し跳ねていて可愛い。
ついクスリと笑うと首を傾げられる。
「何?」
「……ここ、寝癖」
しゃがんでそっと湊の髪に触れる。
至近距離で目が合った。
湊はふっと微笑んで顔を逸らした。
「あーうん、ちょっと直してくるよ」
そう言って立ち上がり洗面台の方に行く。
怒った? なんて少しだけ考えたけれど、寝起きだからかと思って追及はやめた。
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湊も朝風呂に行くと言ったので、その間に私は化粧や着替えを済ませた。
戻ってきた湊と一緒に朝食会場へと向かう。
朝はバイキングらしくて、少し少な目にとった。
野菜を中心に食べる。
湊は、朝は本当に食べないから、とったのはコーヒーと小さなロールパン一個だけだった。
「湊、これだけで大丈夫?」
近くのテーブルでは全種類かと思えるほどの量を何枚もの皿に乗せている男性が居る。
ついそれと比べてしまって問うと、ぼーっとした感じで首を振られた。
「ん、へーき」
だからこんなに細いんだなと納得する。
自分が食べ過ぎている気分になって、少しだけ気まずくなった。
そんなことを気にしてもどうしようもないのに。
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朝ごはん中はそんなに喋るでもなく割と早めに切り上げた。
部屋に戻って荷物を纏めてチェックアウトをする。
湊が手続きをするのを待ってお土産屋さんを覗いた。
昨日飲んだ果実酒を見つけてそれをかごにいれる。
「……やっぱりそれ買うんだ」
戻ってきた湊にそう言われて私は顔を向ける。
「うん。湊は? 何か買う?」
「んー……オレはいいかな」
「そう? じゃあ会計してくるね」
並んでいないレジに行って支払いを済ませる。
財布を出した所でそういえば、と気が付いた。
受け取った商品の袋を持って湊の所へ行く。
「ねぇ湊、お金、どうしたら良い? 今渡そうか」
「お金?」
「うん、宿泊費。半分出すよ」
「いや、いいよ。そういうの。……言ったでしょ、気にしないでって」
「でも、」
「あ、送迎バス来るよ」
年下の湊に全部出してもらうのは悪い気がして提案したものの、あっさり拒否されてしまう。
食い下がろうとした私の頭をポンと叩いて、湊は荷物を持って出口へと向かう。
「……」
何となく違和感を覚えながらも、私もそれに続いた。