レンタル夫婦。
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――残り、12日
結局火曜日も同じように過ごして、水曜日になった。
水木は湊と顔を合わせられない。
朝少し早めに起きてみたけど、もう湊は出た後だった。
私も普通に出社していつも通りの仕事をこなす。
定時で上がった時、桃ちゃんに声を掛けられた。
「良かったらさ、今日ご飯食べて帰んない? 気になる店があって」
「うん、いいよ、行こ」
家に一人でいても悶々としてしまいそうだったから、正直桃ちゃんのその誘いは有難かった。
荷物を持って会社を出て、電車に乗って桃ちゃんの案内のまま店に行く。
そこはアジア系の料理屋さんで、私はフォーを頼んだ。
桃ちゃんはグリーンカレーを頼んでいたみたいだった。
意外とおいしく店内も綺麗で、楽しい時間を過ごせた。
そして、後は帰るだけで。
駅に向かう途中に、……私は、見つけてしまった。
「みなと……?」
人混みの中、一瞬だけ。……もしかしたら、見間違いかもしれないけれど。
確かに、湊が居た。
……ううん、私が湊を見間違えるはずがない。
「ん? どうした?」
「あ、ううん……なんでも、ない」
桃ちゃんに心配そうにのぞき込まれて首を振る。
無理矢理に笑顔を作って誤魔化した。
湊は、女の子と歩いていた。
仲が良さそうに、腕を組んで。
湊の隣に居たのは、私とは正反対のタイプ。
私はよく美人だね、とは言って貰えるけど、可愛い系ではない。
慎重も160cmと小さくはないから、余計に。
さっき見たのは、たぶん150cm前半くらいの、ちっちゃくてゆるふわ系の可愛さで、……胸の大きい子だった。
自分の胸元を見て、その物足りなさに心が痛くなる。
桃ちゃんと別れて電車に乗り込んでも、頭からその光景が消えなかった。
どうしよう、問い詰めるべき?
……って悩んだ所で、そもそも私は湊の彼女ではないのだと思い出した。
デートをして、一緒に暮して、キスもして、セックスもして。
だから、まるで恋人みたいな気になっていたけど、これは契約だった。
もしかしたらさっきの相手が湊の“本当の恋人”で、私はただの仕事なのかもしれない。
……そう思うと悲しくなって、電車内なのに泣いてしまいそうになる。
潤んだ目元を髪で隠すように俯いて、何とかやり過ごした。
――もしも、そうだったら。
湊に他に彼女がいたら。
そんなの考えたこともなかった。
あの優しい声でその子の名前を呼んで、
私にするみたいに頭を撫でて。
それから……キスをして触ったりするのかな。
考えるだけで頭が痛くて割れそうになる。
どうして良いか分からなくて、……でも、湊の顔は見れない気がして。
私は早々にその日眠りについた。