レンタル夫婦。
**
翌日。
私は会社が終わった後、ありささんに会っていた。
カフェでお茶をしながら、湊のことを話す。
流石に寝てしまったのは言えなくて、それ以外を暈して説明した。
本当に好きになったと言ったら、ありささんは少しだけ困った顔をした。
「そう……以前も言ったけれど、それで間違ってる訳じゃないです。……ただ、佐伯くんの気持ちがどうかは私にはわかりかねるので……もし、期間が終了して同じ気持ちなら、そのまま付き合って貰うことにはなってるんですけどね」
ありささんは、大体そんな感じのことを言った。
正直、なんていい加減な企画だと思う。
だってこんなに苦しいくらい好きにさせておいて、何の責任も取って貰えない。
……でも、そんなのも八つ当たりだなって気付いて何も言えなくなる。
帰り際、ありささんは優しく励ましてくれた。
「いつでも話は聞くので……無理はしないでくださいね」
**
――残り、10日
朝はやっぱり湊に会えないまま出勤した。
結局、あの外で見かけたあとは湊と顔を合わせていない。
こんなのって夫婦って呼べるの? って苛々する一方で、時間があく度にどんな顔をして逢えば良いのか分からなくなる。
契約期間がじりじりと終わりに向かっているのもあり、私は少しだけ苛々していた。
『今日早く終わりそうだから、外でご飯食べる?』
そんな時だった。
午後にちょっと休憩を入れた時、スマホにそんな連絡が来ていた。
――私は、すごく単純な人間だな、とその時に自覚した。
『いいよ、どこにいく?』
あんなに色々悩んでいたくせに、しっぽを振るみたいに飛びついてしまう。
すぐにそう返して、テンションが上がるのが分かった。
こんなにも一喜一憂するのは初めてで、湊に振り回される自分が嫌にもなる。
けれど、終わったら湊に会えるって思うだけで、全部吹き飛んでしまった。
もう早く帰りたくて、いつも以上に仕事に集中して終わらせた。
**
「ごめんね、急に誘って」
「ううん! 何食べよっか?」
「んー……みひろさんは、食べたいのある?」
仕事が終わって、二人で決めた駅で待ち合わせをする。
そこは、私の会社とマンションの間くらいの駅だった。
けれど、何となく栄えている駅前は、お店が何でもありそうだった。
「んー麺類が食べたいかな?」
「麺類? パスタとか?」
「えっと……どっちかっていうと、ラーメンとか? がっつり食べたい気分」
そう言うと湊は意外、という表情を作ったあとで頷いてスマホを取り出した。
「あ、この辺だと塩ラーメンのおいしいところがあるみたいだけど、行ってみる?」
「塩! いいね、行こっ」
特に反対する理由もなくてそこに向かう。
人気店らしく結構人がいたけれど、回転率も早いみたいで、5分程待って店内に通される。
オススメとかかれた特製塩ラーメンというのを頼んで出てくるのを待つ。
「みひろさん」
「ん?」
「今週ちょっと忙しくてさ……あんまり会えなくてごめんね」
「え、……ううん、忙しいなら仕方ないよ」
急にそう謝られてドキリとする。
忙しいだけだったんだ、ってホッとすると同時、一昨日見た光景が一瞬頭をよぎった。
「ありがと。……明日は休みだし、またどこか行こうか」
「うん、今度は近場にしよ」
でも、湊がいつも通りに笑うから……私は何も聞けなかった。
翌日。
私は会社が終わった後、ありささんに会っていた。
カフェでお茶をしながら、湊のことを話す。
流石に寝てしまったのは言えなくて、それ以外を暈して説明した。
本当に好きになったと言ったら、ありささんは少しだけ困った顔をした。
「そう……以前も言ったけれど、それで間違ってる訳じゃないです。……ただ、佐伯くんの気持ちがどうかは私にはわかりかねるので……もし、期間が終了して同じ気持ちなら、そのまま付き合って貰うことにはなってるんですけどね」
ありささんは、大体そんな感じのことを言った。
正直、なんていい加減な企画だと思う。
だってこんなに苦しいくらい好きにさせておいて、何の責任も取って貰えない。
……でも、そんなのも八つ当たりだなって気付いて何も言えなくなる。
帰り際、ありささんは優しく励ましてくれた。
「いつでも話は聞くので……無理はしないでくださいね」
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――残り、10日
朝はやっぱり湊に会えないまま出勤した。
結局、あの外で見かけたあとは湊と顔を合わせていない。
こんなのって夫婦って呼べるの? って苛々する一方で、時間があく度にどんな顔をして逢えば良いのか分からなくなる。
契約期間がじりじりと終わりに向かっているのもあり、私は少しだけ苛々していた。
『今日早く終わりそうだから、外でご飯食べる?』
そんな時だった。
午後にちょっと休憩を入れた時、スマホにそんな連絡が来ていた。
――私は、すごく単純な人間だな、とその時に自覚した。
『いいよ、どこにいく?』
あんなに色々悩んでいたくせに、しっぽを振るみたいに飛びついてしまう。
すぐにそう返して、テンションが上がるのが分かった。
こんなにも一喜一憂するのは初めてで、湊に振り回される自分が嫌にもなる。
けれど、終わったら湊に会えるって思うだけで、全部吹き飛んでしまった。
もう早く帰りたくて、いつも以上に仕事に集中して終わらせた。
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「ごめんね、急に誘って」
「ううん! 何食べよっか?」
「んー……みひろさんは、食べたいのある?」
仕事が終わって、二人で決めた駅で待ち合わせをする。
そこは、私の会社とマンションの間くらいの駅だった。
けれど、何となく栄えている駅前は、お店が何でもありそうだった。
「んー麺類が食べたいかな?」
「麺類? パスタとか?」
「えっと……どっちかっていうと、ラーメンとか? がっつり食べたい気分」
そう言うと湊は意外、という表情を作ったあとで頷いてスマホを取り出した。
「あ、この辺だと塩ラーメンのおいしいところがあるみたいだけど、行ってみる?」
「塩! いいね、行こっ」
特に反対する理由もなくてそこに向かう。
人気店らしく結構人がいたけれど、回転率も早いみたいで、5分程待って店内に通される。
オススメとかかれた特製塩ラーメンというのを頼んで出てくるのを待つ。
「みひろさん」
「ん?」
「今週ちょっと忙しくてさ……あんまり会えなくてごめんね」
「え、……ううん、忙しいなら仕方ないよ」
急にそう謝られてドキリとする。
忙しいだけだったんだ、ってホッとすると同時、一昨日見た光景が一瞬頭をよぎった。
「ありがと。……明日は休みだし、またどこか行こうか」
「うん、今度は近場にしよ」
でも、湊がいつも通りに笑うから……私は何も聞けなかった。