レンタル夫婦。
11章:本当の湊
***
――残り、6日
朝、激しい咳き込む音で目が覚めた。
ごほっごほって苦しそうなそれが響いて――それから、ガタンっと大きな音が鳴った。
「!?」
ビックリして外を飛び出す。……と、湊が廊下で倒れていた。
「湊!?」
慌てて駆け寄って抱き起す。……体がめちゃくちゃ熱かった。
「みひ、……さん、」
苦しそうに浅い呼吸を繰り返しながら湊が私を見る。――明らかに、熱があった。
「大丈夫!? えっと……立てる? とにかくベッドに……」
「だいじょ、ぶ……ごめん、……あと戻るか、」
バタン。
壁に捕まって立ち上がろうとした湊は、言葉途中にそのまま倒れた。
「湊!? ……みなと!!」
何でも呼びかけるけど反応がない。
「どうしよ、……救急車!?」
パニックになっておろおろすると、湊の手が私の手首を掴む。
「そんなおーげさに、しないでよ……ただのかぜ」
そう、苦しそうに言われて胸が痛む。
――放っておくことなんて、出来ないと思った。
何とか頑張って、引きずるようにして湊を部屋まで運ぶ。
幸い、湊は細いから私一人でもどうにかはなった。
そのまま、強引にベッドに寝かせる。
それからリビングにある救急セットを取りに行き、そこから体温計を出した。
半分意識がないような湊の熱を測る。
……38.9℃。
インフルエンザみたいな高熱に頭がぐらぐらした。
――どうしよう、私のせいだ。
罪悪感がこみ上げる。
昨日雨の中湊はずぶ濡れになって私を探してくれて。
しかも、その後も私はだだをこねて。
更に、部屋に帰っても、私が先にシャワーを浴びた。
昨日は怒っていたから気付けなかったけど。
本当に、最低なことをしてしまった。
今更遅いのかもしれないけど、だからって何もしない訳にはいかなくて。
私は、湊の看病に徹することに決めた。
会社に休むという連絡を入れる。
具合が悪いと嘘を吐いた。
良くないのは解ってる。……でも、今まで突発休を取ったことはなかったから、お大事にと電話越しに上司に言われた。
それに少しだけ罪悪感が広がる。
でもそれには気付かないふりをした。
湊のおでこに冷えピタを貼って、汗で濡れた身体を拭く。
ちょうど粉のポカリがあったので、それを作って持ってきた。
「みひろさん……しごとは?」
「いいよ、休むって連絡した」
「え……それはダメでしょ」
湊が力なく言う。
その弱弱しい姿に、心がまた痛んだ。
「だって私のせいだから」
「……そんなことないよ。大丈夫だし謝って会社いきなよ」
私が俯くと湊は笑う。
その距離感が辛かった。
「気になって仕事にならないもん。行っても同じだよ。だから看病させて」
社会人として失格だなぁと頭の隅に過る。
でもどうしてもダメだった。湊の手をぎゅっと握る。
「……べたべたしないんじゃ、なかったの」
湊はそう半ば呆れるみたいに呟いた。
それは最もだと思うけど、……でも。
「だって、……放っとけないよ」
それがもう、本心だった。
私のせいってのは勿論あるけれど。
ここまで苦しそうな湊を一人にはしておけない。
それが少しでも伝わって欲しくて、握る手にぎゅっと力を籠める。
「……ありがと」
それが伝わったのか単に諦めたのか。
本心は読めないけど、湊はそう笑った。
――残り、6日
朝、激しい咳き込む音で目が覚めた。
ごほっごほって苦しそうなそれが響いて――それから、ガタンっと大きな音が鳴った。
「!?」
ビックリして外を飛び出す。……と、湊が廊下で倒れていた。
「湊!?」
慌てて駆け寄って抱き起す。……体がめちゃくちゃ熱かった。
「みひ、……さん、」
苦しそうに浅い呼吸を繰り返しながら湊が私を見る。――明らかに、熱があった。
「大丈夫!? えっと……立てる? とにかくベッドに……」
「だいじょ、ぶ……ごめん、……あと戻るか、」
バタン。
壁に捕まって立ち上がろうとした湊は、言葉途中にそのまま倒れた。
「湊!? ……みなと!!」
何でも呼びかけるけど反応がない。
「どうしよ、……救急車!?」
パニックになっておろおろすると、湊の手が私の手首を掴む。
「そんなおーげさに、しないでよ……ただのかぜ」
そう、苦しそうに言われて胸が痛む。
――放っておくことなんて、出来ないと思った。
何とか頑張って、引きずるようにして湊を部屋まで運ぶ。
幸い、湊は細いから私一人でもどうにかはなった。
そのまま、強引にベッドに寝かせる。
それからリビングにある救急セットを取りに行き、そこから体温計を出した。
半分意識がないような湊の熱を測る。
……38.9℃。
インフルエンザみたいな高熱に頭がぐらぐらした。
――どうしよう、私のせいだ。
罪悪感がこみ上げる。
昨日雨の中湊はずぶ濡れになって私を探してくれて。
しかも、その後も私はだだをこねて。
更に、部屋に帰っても、私が先にシャワーを浴びた。
昨日は怒っていたから気付けなかったけど。
本当に、最低なことをしてしまった。
今更遅いのかもしれないけど、だからって何もしない訳にはいかなくて。
私は、湊の看病に徹することに決めた。
会社に休むという連絡を入れる。
具合が悪いと嘘を吐いた。
良くないのは解ってる。……でも、今まで突発休を取ったことはなかったから、お大事にと電話越しに上司に言われた。
それに少しだけ罪悪感が広がる。
でもそれには気付かないふりをした。
湊のおでこに冷えピタを貼って、汗で濡れた身体を拭く。
ちょうど粉のポカリがあったので、それを作って持ってきた。
「みひろさん……しごとは?」
「いいよ、休むって連絡した」
「え……それはダメでしょ」
湊が力なく言う。
その弱弱しい姿に、心がまた痛んだ。
「だって私のせいだから」
「……そんなことないよ。大丈夫だし謝って会社いきなよ」
私が俯くと湊は笑う。
その距離感が辛かった。
「気になって仕事にならないもん。行っても同じだよ。だから看病させて」
社会人として失格だなぁと頭の隅に過る。
でもどうしてもダメだった。湊の手をぎゅっと握る。
「……べたべたしないんじゃ、なかったの」
湊はそう半ば呆れるみたいに呟いた。
それは最もだと思うけど、……でも。
「だって、……放っとけないよ」
それがもう、本心だった。
私のせいってのは勿論あるけれど。
ここまで苦しそうな湊を一人にはしておけない。
それが少しでも伝わって欲しくて、握る手にぎゅっと力を籠める。
「……ありがと」
それが伝わったのか単に諦めたのか。
本心は読めないけど、湊はそう笑った。