レンタル夫婦。
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その日は大きめの会場でゲーム関連のイベントをやっているようだった。
よく分からないけれど人が多くて熱気も凄い。
湊に手を引かれて人混みの中を進む。
広すぎて迷子になりそうだ……なんて考えながら必死に湊についていく。
「……ごめん、歩くのはやい?」
「ううん、大丈夫」
気遣って貰えて、それだけなのにやっぱり湊は優しいなって考える。
はぐれないように繋いでいるだけの手が嬉しくて、本当は離さないで欲しかった。
大分歩いて、辺りが賑やかになってくる。
色々とブースがあり、何やらイベントをやっているらしかった。
大きな音や音楽が鳴り響いて、何をしているのか気になる。
覗きたい衝動に駆られたけれど大人しく湊についていった。
「やあ、よく来たね」
暫く歩いて漸く湊の歩みが止まる。
そこには、昨日居た茂原さんが待っていた。
「今日は有難うございます」
そう頭を下げる湊に私も頭を下げる。
茂原さんははっはっは、と豪快に笑った。
「いいよいいよ、そんな硬くならなくて。んじゃ佐伯くんはこっちに来てもらおうかな、みひろちゃんは……どうしよう、手が空いてる?」
「空いてます、けど……」
「そうかそれなら――」
――悪いんだけど、スタッフの仕事を手伝って貰えないかな? 一人休みが出ちゃって。
もちろん給料は払うから。
そう茂原さんに頼まれて、私はすぐに頷いた。
元々やることもなかったし、私が何かすることで、間接的にでも湊の役に立つなら何でもしたかった。
スタッフ、というのはそこまで難しいことじゃなく、人を綺麗に整列させたりあとは机に座って売り子などをやった。
初めてのことで戸惑うことも多かったけれど、他のスタッフさんが優しく教えてくれたお陰で乗り切れた。
湊は茂原さんとどこかに行ってしまったらしく姿は見えない。……少しでも、湊にとって良い方向に進めば良いのにって考える。