凸凹リレイション
凸
*凸*
窓から差し込む日光に、松崎香苗(まつざき かなえ)は目を細めた。
無理矢理に元気を出せと言わんばかりの朝の日差しを遮るためカーテンを引くと、母親が「部屋が暗くなるじゃないの」と文句をつける。
耳に入ってくるのはテレビリポーターの甲高い声。最近流行りのコーディネートという言葉に耳を引かれて画面を見ると、ガウチョパンツとのコーディネートについて色々紹介しているようだ。
(あ、大人っぽくていいかも)
香苗はテレビ画面左上の時間を見ながら、綺麗な茶色に焼けたトーストにバターを塗り、口にくわえた。時刻は七時十五分。急がないと、迎えがきてしまう。
思った途端に鳴る呼び鈴。「はいはい」と聞こえるはずのない返事をしながら玄関に向かう母親を尻目に、パンを口に詰め込んでブラックコーヒーで流し込む。
そして最後に、鏡の前に向かう。どんなに急いでいても、身だしなみチェックだけは欠かしたことがない。
くるりとカールした睫毛、アイラインだけを薄くきかせてくっきり見せた目元。短めの髪は外側にカールさせてある。弾むような雰囲気を演出したつもりだ。
鏡に映る自分の姿を見て、香苗が満足気に頷くのと同時に、母親が呆れたような声を出した。
「香苗、早くしなさい。明日美(あすみ)ちゃん、ずっと待ってるんだよ」
「わかってるって!」
それでも香苗はその場で唇に色のついたリップを塗る。頬に感じる痛い視線に、「女の子の身だしなみでしょ」と呟いたのは言い訳だ。
「行ってきます」
苦笑する母親を横目に、香苗は玄関から飛び出した。
窓から差し込む日光に、松崎香苗(まつざき かなえ)は目を細めた。
無理矢理に元気を出せと言わんばかりの朝の日差しを遮るためカーテンを引くと、母親が「部屋が暗くなるじゃないの」と文句をつける。
耳に入ってくるのはテレビリポーターの甲高い声。最近流行りのコーディネートという言葉に耳を引かれて画面を見ると、ガウチョパンツとのコーディネートについて色々紹介しているようだ。
(あ、大人っぽくていいかも)
香苗はテレビ画面左上の時間を見ながら、綺麗な茶色に焼けたトーストにバターを塗り、口にくわえた。時刻は七時十五分。急がないと、迎えがきてしまう。
思った途端に鳴る呼び鈴。「はいはい」と聞こえるはずのない返事をしながら玄関に向かう母親を尻目に、パンを口に詰め込んでブラックコーヒーで流し込む。
そして最後に、鏡の前に向かう。どんなに急いでいても、身だしなみチェックだけは欠かしたことがない。
くるりとカールした睫毛、アイラインだけを薄くきかせてくっきり見せた目元。短めの髪は外側にカールさせてある。弾むような雰囲気を演出したつもりだ。
鏡に映る自分の姿を見て、香苗が満足気に頷くのと同時に、母親が呆れたような声を出した。
「香苗、早くしなさい。明日美(あすみ)ちゃん、ずっと待ってるんだよ」
「わかってるって!」
それでも香苗はその場で唇に色のついたリップを塗る。頬に感じる痛い視線に、「女の子の身だしなみでしょ」と呟いたのは言い訳だ。
「行ってきます」
苦笑する母親を横目に、香苗は玄関から飛び出した。
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