凸凹リレイション
彼はそんな明日美の様子を満足そうに眺め、にっこり微笑むと、デザイン図を手前の方に引っ張った。
「絵上手だね。これって、家庭科のヤツでしょ? こういうデザインって簡単に作れる?」
「簡単……ではないですけど。あの」
(か、返して!)
明日美の方はパニックだ。手を伸ばしても逃げていくデザイン図。そのやり取りを見てなのか、周囲がざわざわとしてくる。注目が集まるのも感じて、恥ずかしさに押しつぶされそうになる。
対する少年はあくまでも楽しそうだ。周りなんて気にもしていないように、視線を明日美に注ぎ続ける。
「このデザイン、気に入ったんだよなー。今度ゆっくり話せないかな。どこのクラス?」
「わ、私? えっと、三組ですけど」
「俺、五組の三笠 俊介(みかさ しゅんすけ)。昼休みちょっと話せる? 三組に行くから。えっと名前……」
「……わ、我妻ですけど」
「我妻ね。じゃあ昼行くから逃げるなよ。じゃあなー」
三笠はデザイン画を持ったまま廊下を走って行ってしまう。
(返して……くれないの? ていうか、今何が起こったの)
明日美は今の会話が信じられないまま、茫然をそれを見送った。