凸凹リレイション


 明日美と三笠俊介のやり取りの間ずっと黙って見ていた八重だったが、教室まで辿りついた途端、興奮した様子で明日美を窓際まで引っ張っていった。


「さっきの、三笠くんだよ。凄いね、明日美」

「凄いって、何が?」

「三笠くんって、私と同じ中学出身なの。カッコいいというか、可愛い顔してて、明るくって元気で一部には人気者なんだよ。アニメオタクを公言しててねー、ダメって子はダメみたいだけど」

「オタク……?」

「うん。でも明るいオタク。だから私たちみたいな二次元好きには人気あるの。まあ、私は話したことはないけど」

「八重ちゃんの、好きな人?」

「ううん。そこまでではない。ちょっと憧れてただけ」

「そっか」


 明日美はふうと息を吐きだす。


(あれ、なんでほっとしてる?)


 ドキドキし続けたままの胸を抑えながら、明日美は淡々と話す八重を見つめる。

 別に、今あったばかりの彼をどうこう思っている訳ではないのだが、普段男の子と話さない明日美にとっては、先ほどの出来事はちょっとした事件だったのだ。


(あんな格好いい人に話しかけられるのなんて初めてだから、ドキドキしてるだけだよ……ね)


 頭から離れない彼の笑顔を振り払うように、明日美は首を振った。


「どうしたの? 明日美」

「ううん。何でもない。あ、ほら、先生来ちゃった」


 八重を追い立て、席につく。
 授業中にも思い浮かぶ三笠俊介の姿を、明日美は何度も振り払わねばならなかった。

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