凸凹リレイション


 昼休み、明日美はいつも八重とお弁当を食べている。明日美の前の席の机を借り、向きを変えて向かい合う。その間も、明日美ははびくびくしながら、何度も教室の入り口を窺った。

 八重はそれを見ながら楽しそうにつぶやいた。


「三笠くん、ホントに来るかなぁ。ちょっと楽しみだね。でもさっきの態度見てたら、私が同じ中学ってのも気付いてなさそうだったよねー」

「そ、そう?」

「そうだよー。っていうかさ、何でそんなビビってるの、明日美」


 “三笠”の名前が出るたびに肩をびくつかせる明日美に、八重は苦笑する。


「怖くないって、いい人だよ、三笠くん」

「だって。男の子と話すことなんか、ほとんどないし」

「私だってないけど。でも今回は、あっちから話しかけてくるんだからいいじゃん」

「でも」


 それでも、上手く話せなかったら呆れられてしまう。明日美の眉尻は下がりっぱなしだ。


「私、上手く話せないもん」

「うまくって?」

「楽しませたりとか、そういうのできない。それでつまらない子だなって思われたら嫌だから、話さない方がいい」

「それは気にしすぎじゃない? 三笠くんが話したいって言ってるんだからいいんだよ」

「うん……まあ、そうなんだけどね」


 八重の言葉に、明日美はちょっとだけ気が軽くなり笑顔になる。しかし、同じタイミングで教室の扉が開き、折角ほぐれた気持ちは、再び緊張に固くなった。
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