凸凹リレイション
「えーっと。我妻! 我妻っている?」
教室一帯に響き渡る元気一杯の声。誰が返事をしたわけでもないのに、三笠俊介は「あ、いたいた」と一人で声を張り上げ、教室の奥の明日美と八重のところまでやってくる。
(この人、すごい。遠慮とかそういうの、ないのかな)
固くなったままの明日美は、もはや箸さえ動かせない。
「おーっす。昼食い終わった?」
「あ、あの」
固まる明日美に、八重が「頑張れ」と小声で応援する。
「あ、ウィンナー旨そうじゃん。ちょうだい」
返事も聞かずにひょいとウィンナーを拾い上げる彼を、明日美は茫然と見上げる。会話のペースは完全に三笠俊介のものだ。
「うまいうまい。ね、ここ座っていい。オトモダチも。俺入っていい?」
「いいよ。私、三笠くんと中学一緒だったんだけど覚えてない?」
「マジで? 同中? あーでもごめん。覚えてないや。名前は?」
「川野八重」
「川野ね。今度から覚えとく。でさ、我妻サン? 食い終わったらちょっとこれ見てよ」
「は、はい」
赤い顔を隠すようにうつむいて、肩をすぼめて小さくなる明日美は、さながら猛獣の前のネズミだ。実際、あまりのマイペースな話しぶりに、食われたような気持ちになっている。
「俺さー、冬のコミケでこんなの着たいんだよね。でね、安い店とか捜してんだけどイメージどおりなのが無い訳」
「コミケ?」