凸凹リレイション
「ああ知らない? コミックマーケット。同人誌売ったりとかさ。ちょっとオタクの集まりだけど。俺オタクだから」
「えと。あの」
「みんな、好きなアニメとかの格好していくわけ。コスプレって知ってる?」
「知って……る」
「じゃあ、話早いじゃん。だからこういうシャツが欲しいんだよね。まだまだ時間あるしさ。その家庭科の課題って秋辺りに提出だろ? 俺の作ってくれないかなーって思って」
「えっ?」
予想もつかないお願いに明日美はますます挙動不審になる。
今日見知ったばかりの男の子のシャツを、学校の課題で作ると言うのはかなりの難問だ。今回の家庭科は、別に女物指定という訳ではない。実際に彼氏のシャツをつくるという女性徒もいた。でも、彼氏どころか男友達さえいない明日美が男物のシャツなど作ったら、変な噂をされてしまう。
やる前から周りの変な視線を意識してしまって、息苦しくなってくる。
「家庭科のは、……ちょっと」
「ダメ?」
顔を覗き込むようにして、片目をつぶってお願いしてくる俊介に、明日美の顔が熱くなる。
(どうしてこの人、こんなにフレンドリーなの)
男の子にまっすぐに目を見られることなど初めての明日美には、それだけでドキドキが止まらない。はやる心臓は苦しいくらいだ。ずっと黙っているわけにもいかず、詰まってしまいそうな喉から無理矢理声を絞り出す。