凸凹リレイション
凸
*凸*
待ち合わせ時刻は夜の七時。
香苗と琴美は制服姿のまま、駅のトイレでメイクだけは直して待ち合わせ場所のデパートの前に立っていた。
「おっそいなー。勝(まさる)くん、なにしてんだろ」
「大学生だもん色々あるんじゃないの?」
頬を膨らませた琴美を宥めるように香苗は言う。春も終わりのこの季節、日中は暖かいが夜の風はまだ冷たく、ふたりの体から容赦なく熱を奪っていく。目当てのショップはこのデパートに入っているのに、この場所で身を震わせているのは合理的とは言えない。
(待たずに入っちゃえばいいのに)
しかし、琴美にとっては『彼氏と一緒に行く』ということが重要なので、寒くとも先に入るという選択肢はないらしい。少しイライラしながら、香苗はため息をついた。
「あー、メール来た。内村くんが遅れたんだって。もう! 香苗のとこにメール来てないの?」
「無いわよ。そこまでいちいち報告しないでしょ、普通」
「するでしょ、普通。彼女だもん」
「そうかな」
香苗のスマホは先ほどから振動一つしない。
内村と付き合い始めたのはほんの一ヶ月前からだけれど、付き合い方は至ってドライなものだった。時間が会えば会う、そうでなければ別行動。常にメールのやり取りをするような琴美と勝の付き合い方は理解できない。
今だって、琴美がいなければ、香苗は迷わず先に入るだろう。
(大体、怒るくらいなら先に入っちゃった方がお互い気が楽じゃない?)
それでも“普通”という言葉には弱い。香苗は流行りに乗っていたかった。普通の少し上を常に歩いていたい。
(もう少しマメに連絡とったほうがいいのかなぁ)
隣で頬を膨らませる琴美を見ながら、香苗はぼんやりと思った。
待ち合わせ時刻は夜の七時。
香苗と琴美は制服姿のまま、駅のトイレでメイクだけは直して待ち合わせ場所のデパートの前に立っていた。
「おっそいなー。勝(まさる)くん、なにしてんだろ」
「大学生だもん色々あるんじゃないの?」
頬を膨らませた琴美を宥めるように香苗は言う。春も終わりのこの季節、日中は暖かいが夜の風はまだ冷たく、ふたりの体から容赦なく熱を奪っていく。目当てのショップはこのデパートに入っているのに、この場所で身を震わせているのは合理的とは言えない。
(待たずに入っちゃえばいいのに)
しかし、琴美にとっては『彼氏と一緒に行く』ということが重要なので、寒くとも先に入るという選択肢はないらしい。少しイライラしながら、香苗はため息をついた。
「あー、メール来た。内村くんが遅れたんだって。もう! 香苗のとこにメール来てないの?」
「無いわよ。そこまでいちいち報告しないでしょ、普通」
「するでしょ、普通。彼女だもん」
「そうかな」
香苗のスマホは先ほどから振動一つしない。
内村と付き合い始めたのはほんの一ヶ月前からだけれど、付き合い方は至ってドライなものだった。時間が会えば会う、そうでなければ別行動。常にメールのやり取りをするような琴美と勝の付き合い方は理解できない。
今だって、琴美がいなければ、香苗は迷わず先に入るだろう。
(大体、怒るくらいなら先に入っちゃった方がお互い気が楽じゃない?)
それでも“普通”という言葉には弱い。香苗は流行りに乗っていたかった。普通の少し上を常に歩いていたい。
(もう少しマメに連絡とったほうがいいのかなぁ)
隣で頬を膨らませる琴美を見ながら、香苗はぼんやりと思った。