凸凹リレイション
*
ふたりが通う高校は、電車で二駅乗ったところにある。
いつものように電車を降りてから、同じ高校に向かう学生の波に逆らわず、昨日のテレビの話をしながら歩く。
明日美は漫画やアニメには詳しいが、芸能ネタにはとんと無知だ。昨日のドラマの話や、ネットで得た情報を話すたびに「えええー」とか、「知らなかったー」とか、大袈裟な程に反応して、必ず最後に一言言う。
「香苗ちゃんって何でも知ってるんだね」
香苗にとってはそれが面白くもあり、優越に浸れる瞬間でもある。
お互いを凸と凹という形で例えるとしたら、間違いなく香苗は凸の方だろう。
校門をくぐり昇降口に入ると、「じゃあね」と軽くかわして、ふたりは別々の靴箱を目指す。クラスが違うので、いつもここで自然に別れるのだ。
香苗が靴を履き替えていると、後ろから誰かに背中を叩かれた。叩かれた、というよりはどつかれたと言った方がいいほど、遠慮のない叩き方で。
「なにすんのよ!」
「おっはよー、香苗」
「何だ琴美(ことみ)」
そこに居たのは、同級生の尾上琴美(おのうえ ことみ)だ。
ふわふわの緩いロングの髪を揺らし、綺麗に睫毛をカールして、先生にばれないほどの薄化粧を施している。
(うん。かわいい)
琴美は同類に入るタイプの友達だ。普通に着たらやぼったいだけの制服は、彼女が着るとアイドルが着ている制服のように華やかになる。自分のおしゃれにかけては自信があるつもりだが、琴美はさらに上をいくという感じで誇らしい。
琴美は、靴を履きかえながら、一人階段を上がっていく明日美を見つける。
「アンタ、ホントにあの子と毎日一緒に通ってんだね」
一瞬、動きを止めてしまうほど冷たい言い方。琴美が明日美のことをバカにしているのは明白だった。
「幼馴染だし」
「かまわなきゃ良いじゃん。あんなダサい子」
「色々あんのよ」
香苗は、曖昧に返事をする。
本当だったら、こういう時にかばうのが親友なのかもしれないが、明日美がダサいのは本当の事だ。
ふたりが通う高校は、電車で二駅乗ったところにある。
いつものように電車を降りてから、同じ高校に向かう学生の波に逆らわず、昨日のテレビの話をしながら歩く。
明日美は漫画やアニメには詳しいが、芸能ネタにはとんと無知だ。昨日のドラマの話や、ネットで得た情報を話すたびに「えええー」とか、「知らなかったー」とか、大袈裟な程に反応して、必ず最後に一言言う。
「香苗ちゃんって何でも知ってるんだね」
香苗にとってはそれが面白くもあり、優越に浸れる瞬間でもある。
お互いを凸と凹という形で例えるとしたら、間違いなく香苗は凸の方だろう。
校門をくぐり昇降口に入ると、「じゃあね」と軽くかわして、ふたりは別々の靴箱を目指す。クラスが違うので、いつもここで自然に別れるのだ。
香苗が靴を履き替えていると、後ろから誰かに背中を叩かれた。叩かれた、というよりはどつかれたと言った方がいいほど、遠慮のない叩き方で。
「なにすんのよ!」
「おっはよー、香苗」
「何だ琴美(ことみ)」
そこに居たのは、同級生の尾上琴美(おのうえ ことみ)だ。
ふわふわの緩いロングの髪を揺らし、綺麗に睫毛をカールして、先生にばれないほどの薄化粧を施している。
(うん。かわいい)
琴美は同類に入るタイプの友達だ。普通に着たらやぼったいだけの制服は、彼女が着るとアイドルが着ている制服のように華やかになる。自分のおしゃれにかけては自信があるつもりだが、琴美はさらに上をいくという感じで誇らしい。
琴美は、靴を履きかえながら、一人階段を上がっていく明日美を見つける。
「アンタ、ホントにあの子と毎日一緒に通ってんだね」
一瞬、動きを止めてしまうほど冷たい言い方。琴美が明日美のことをバカにしているのは明白だった。
「幼馴染だし」
「かまわなきゃ良いじゃん。あんなダサい子」
「色々あんのよ」
香苗は、曖昧に返事をする。
本当だったら、こういう時にかばうのが親友なのかもしれないが、明日美がダサいのは本当の事だ。