凸凹リレイション

*凹*



 明日美が学校についたのは、まだ校門の鍵も開けられていないような時間だった。立ち尽くしていると、五分後に用務員が来て、「ごめんごめん」と笑って鍵を開けてくれる。

 明日美は軽く礼をして、そのまま教室へと駆け上がった。当然、廊下にも教室にも誰もいない。ホッとして、自分の机にカバンを置いた。

 誰にも顔を見られたくないという思いで早くに学校に来たものの、やがて人はやってくる。明日美はため息をついた。

(でも、サボる度胸もない)

 情けなくなって、机に突っ伏す。

 目をつぶると思い出すのは昨日のことだ。楽しくて幸せで、でも最後にどん底に突き落とされた昨日。

 迷いながらも手芸屋に到着し、明日美はセール品の中から好みの生地を見つけた。八重もそれほど悩まなかったが、一番時間をかけたのが俊介だ。肌触りを気にしたり、わざわざ生地を照明の下にもっていって光沢を見たりとこだわりの部分を店員と根を詰めて話していた。


「じゃあ、頼むな! 我妻」

「う、うん。でも、その、期待しないでね」


 俊介の買った生地は、そのまま明日美が預かった。持っているだけで胸が早鐘を打つ。失敗したらどうしようという思いと、自分の作ったものを彼が着るのかという高揚とがないまぜになった気持ちが内側で暴れていた。
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