凸凹リレイション
「え? だって。……え?」
「憧れてた。……話してみたら気さくで楽しい。そう思ってるのは、明日美だけじゃないんだから」
焦りで、手に汗がにじんでくる。
八重と俊介の方がお似合いだと思っていた。なのに、現実にそうなのかと思ったら、顔が強張る。
(協力するよって、言わなきゃ。友達だもの)
自然に体が震え、昨日見た光景が頭によみがえった。現実とは違い、香苗の位置に八重がいる。体中の血液が一気に下がって、想像なのに目をそむけたくなった。
(――いや。私、やっぱり)
「……あ、の」
自分の気持ちが、声になって出てこない。明日美は意気地のない自分を呪った。
「ごめん、八重ちゃん」
結局、八重をその場に残したまま逃げ出した。先ほどはこらえられた涙が、今度は止まらなかった。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。生徒が徐々に減っていく廊下。すぐに先生も来てしまうだろう。だけど、このまま教室へは行けそうもない。
明日美はこっそりと屋上を目指し、誰もいないそこでハンカチに顔をうずめて泣いた。