凸凹リレイション
凹
*凹*
明日美は、二階の教室の扉の前で深呼吸をする。
(やだな、閉まってる)
教室の扉は、空きっぱなしならば入っても誰も関心など寄せないのに、扉が滑るガラガラ音には、中にいる人間にとってサイレンに似た効果がある。
(なんだ、って思われるのが嫌なのに)
渋々明日美が扉を開けると、予想通り一瞬人目が集まる。しかし明日美の姿を確認すると、声をかけるでもなくすぐに自分たちの会話に戻っていく。それが自分の無価値を表しているようで、明日美はなんとなく傷ついてしまう。
(だから、最初から見られたくないのに)
うつむいたまま静かに窓際に向かい、教科書を机の中に移して一息つく。
そのうちに再び扉が開く音がして、明日美と同じように髪を二つ結びにした女生徒が入ってきた。周囲の反応は明日美の時と同じようだが、彼女は気にした風もなく明日美のもとへと一直線にやってくる。
「おはよ、明日美。ねー、昨日の続き描いた?」
明日美の友人である川野八重(かわの やえ)だ。屈託なく話す八重に、ほっとして自然と表情が緩む。
「うん。描いたよ。でもちょっとだけだけど。見たい?」
「見たい」
八重が見せる満面の笑顔。受け入れてもらえる安心感に、明日美も自然に笑顔になった。
鞄の中から、使いこんだノートをとりだし、八重に差し出す。
明日美は、二階の教室の扉の前で深呼吸をする。
(やだな、閉まってる)
教室の扉は、空きっぱなしならば入っても誰も関心など寄せないのに、扉が滑るガラガラ音には、中にいる人間にとってサイレンに似た効果がある。
(なんだ、って思われるのが嫌なのに)
渋々明日美が扉を開けると、予想通り一瞬人目が集まる。しかし明日美の姿を確認すると、声をかけるでもなくすぐに自分たちの会話に戻っていく。それが自分の無価値を表しているようで、明日美はなんとなく傷ついてしまう。
(だから、最初から見られたくないのに)
うつむいたまま静かに窓際に向かい、教科書を机の中に移して一息つく。
そのうちに再び扉が開く音がして、明日美と同じように髪を二つ結びにした女生徒が入ってきた。周囲の反応は明日美の時と同じようだが、彼女は気にした風もなく明日美のもとへと一直線にやってくる。
「おはよ、明日美。ねー、昨日の続き描いた?」
明日美の友人である川野八重(かわの やえ)だ。屈託なく話す八重に、ほっとして自然と表情が緩む。
「うん。描いたよ。でもちょっとだけだけど。見たい?」
「見たい」
八重が見せる満面の笑顔。受け入れてもらえる安心感に、明日美も自然に笑顔になった。
鞄の中から、使いこんだノートをとりだし、八重に差し出す。