凸凹リレイション


 三時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響き、明日美と八重は荷物をまとめて家庭科室を出た。

 現在の家庭科はブラウス作りだ。まだ始まったばかりで、作りたいイメージをまずは絵に起こしてみるというのが今日の課題だった。

 得意分野に嬉しくなりながら、明日美は何枚もデザインを考えた。


「明日美、生地学校で買う? 私、自分で買って来ようかなって思うんだけど、一緒に行かない?」


 学校で注文もできるが、自分たちで買ってきても良いという。サンプルを見て、あまり好みの色がなかった明日美には渡りの船の誘いだ。


「うん、行きたい。今度の日曜とかどう?」

「いいよ。楽しみー。でも私、縫う方は苦手なんだよね。明日美は?」

「私は結構好きかも。お裁縫」


 教科書の角を指先でこすりながらモジモジと言う。

 明日美は昔から手先を使うことが大好きだった。指先の動きに集中しているうちに、普段は気になって仕方ない周りの音が消えていく。しがらみから解放されたように、自分の考えが湧き出てきて、思うが儘に指が動いていく。とても自由になったような気持ちがして、落ち着くのだ。

 香苗という人当たりの良い友達が常に傍にいた為か、明日美は自分から話す必要があまりない。元々社交的でないこともあって、人と話すのは苦手だ。それが好きなものであっても同様で、何故だか恥じらいの方が先に出てしまう。趣味のことも、安心して話せるのは八重だけだった。


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