放課後、キミとふたりきり。
「佐江ちゃん、ありがとう! 沢井さんのこと連れてきてくれて」
藤枝さんは華やかな笑顔で近寄ってくると、徳永さんの手をきゅっと握った。
それに徳永さんは困ったような、戸惑うような苦笑いを浮かべ「いいよ」と首を振る。
「藤枝さん、沢井さんと知り合いだったんだね」
「うん。さっきもショッピングモールで話したの。ね?」
迫力のある美人に同意を求められ、思わずうなずいてしまった。
確かにショッピングモールでは会ったけれど、あれは話したと言えるんだろうか。
知り合いと言えるのかも疑問だけれど、それをここで口にする勇気はなかった。
わたしが同意したことに、徳永さんはほっとしたように何度かうなずいた。
「そうなんだ。じゃあ、わたしはこれで。藤枝さんも、沢井さんも、またね」
「あ、うん。また……」
「佐江ちゃん、帰るとこだったのに引き留めてごめんね? また明日!」
帰っちゃうの? と驚きながらも、やっぱりそれは口に出来ず、去っていく徳永さんを呆然と見送った。