放課後、キミとふたりきり。

「佐江ちゃん、ありがとう! 沢井さんのこと連れてきてくれて」


藤枝さんは華やかな笑顔で近寄ってくると、徳永さんの手をきゅっと握った。

それに徳永さんは困ったような、戸惑うような苦笑いを浮かべ「いいよ」と首を振る。


「藤枝さん、沢井さんと知り合いだったんだね」

「うん。さっきもショッピングモールで話したの。ね?」


迫力のある美人に同意を求められ、思わずうなずいてしまった。

確かにショッピングモールでは会ったけれど、あれは話したと言えるんだろうか。

知り合いと言えるのかも疑問だけれど、それをここで口にする勇気はなかった。


わたしが同意したことに、徳永さんはほっとしたように何度かうなずいた。


「そうなんだ。じゃあ、わたしはこれで。藤枝さんも、沢井さんも、またね」

「あ、うん。また……」

「佐江ちゃん、帰るとこだったのに引き留めてごめんね? また明日!」


帰っちゃうの? と驚きながらも、やっぱりそれは口に出来ず、去っていく徳永さんを呆然と見送った。
< 102 / 223 >

この作品をシェア

pagetop